光のない部屋
もち
光のない部屋
毎日が憂鬱だ。
変わり映えのない日々。安定した日常だなんて言う人もいるが、小さな部屋でただ虚空を見つめるだけの生活を楽しいだなんて思う奴がいるものか。でも私はこの生活から抜け出すことはできない。光の下でまた息をするなんて考えられない。結局、私は憂鬱だと言いながらこの陰鬱とした狭く小さな空間を気に入っているのだ。
戸を叩く音がする。
どうやらお迎えが来たようだ。ピシリと襟元を正した男が私に外に出るように促す。私は重い腰を上げてのろのろと歩く。
番号が呼ばれた。
ゆっくりと前に出ると声をかけられた。君は刑期満了だ、お疲れ様と。そう言った男は、私の背を軽く叩いて、私を光と活気に満ち溢れた世界に送り出す。その暖かな光が、喧騒が、私の全身を貫いて私をここに繋ぎ止めようとする。
男はほら早く、と私の背を押す。私の体は光を目一杯に受け、地面に影を残す。私は影をじっと見つめてこう思うのだ。
この小さくて狭い檻に、唯一の居場所にまた帰ろう、と。
光のない部屋 もち @mochichi_002
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