【短編】過去問、始めました。

星野光留

深夜、勉強机にて

街のあらゆる人々が寝静まり、沈黙と暗闇だけが満ちる、冬の深夜のこと。ひとりの受験生が、今まさに勉強に取り掛かろうとしていました。


「よし……やるか」


彼は、意気込んで過去問のテキストを開きました。

『大学入学共通テスト』の過去問テキストです。


日付は1月17日。

時刻は、なんと、23時!


彼の持つ過去問テキストは、ぴかぴかです。

書き込みもなければ、付箋すらありません。

そう。彼は、この期に及んで、無謀にも、一夜漬けしようというのでした。


その自信はいったいどこから来るのでしょう。

根拠や裏打ちがあるのか、どころではありません。


それはもはや、暴虐であり、蛮勇でした。


しかし、この絶望的な状況の中でも彼は一歩も引きません。それどころか、余裕の微笑みを湛えているではありませんか。ページを1枚ずつめくり、ゆっくりと、問題を確認しているようです。


おっと!

ノートを開いて問題を解き始めました!

凄い早さだ! 

さては答え丸写しかーーーーー!?


未だもの凄い早さで書き込みが増えていく彼のノートを、よく見てみましょう。数学のようです。

答えには記載されていないであろう途中式を書いているようです。とんでもない速度で。


それはもはや、常人には理解できないほどのスピードで……天才の所業と呼ぶべきものでした。


***


彼は、とても勉強熱心でした。

そして、勉強が生きがいでした。

普段の授業から予習復習を欠かさずこなし、分からないことがあればその日のうちに先生に質問をして疑問を解消し、ゲームすら買わず、寝食以外の全ての時間を勉強に費やし、努力を積み上げて決して怠らず、全てのテストで満点をとるようにこなしてきました。


まさに、神童。


彼は誰よりも知っていました。

普段の行いは、全て自分に返ってくるのだと。

それは、悪いことでも、良いことでも、同じ。


だからこそ、彼は積み上げたのです。



彼の本番での結果。

もはや言うまでもありませんよね。

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