生きていれば辛いことの連続 でもこんな瞬間があれば……

 アラフォー塾講師の夏帆は、教え子矢口の不穏な一言に話を聞くことにします。

 シンと腹の痺れるような辛い告白に、言葉を失う夏帆。慰めも励ましも、薄氷の上に佇む矢口の心には届かないと感じます。
 代わりにポツリポツリと語ったのは、自身の過去と無感覚に生きる今の心情。

 二人の言葉から浮き彫りになるのは―――

 高校生の瑞々しい感性で捉えられた切羽詰まった絶望。 
 大人の疲れてあきらめと共に受け入れた絶望。

 人物造形が見事なので、それぞれの抱える気持ちがリアルに胸に迫ってきました。

 そんな二人が、ほんの少し、笑えるようになるラストにホッとすると共に、生きることの本質を思い出させてもらえました。

 一人でも多くの方に、この作品を読んでいただきたいと思いました。
 特に、今、笑えなくなっている方に。
 夏帆さんと江口君と、心を重ねてみてください。
 きっと、少しだけ、胸が温かくなるはず。

 お勧めです!