第3話 アリス隊
クリスティアファミリーの一員となってから、俺はこの世界のこと、そしてマフィアの仕組みについてアリスに尋ねた。
「ねえカイト、あなた本当に何も知らないのね……」
半ば呆れたようにため息をつきながらも、アリスは丁寧に教えてくれた。
「まず、この街の名前だけど――ここはアリアンテ。スフィア王国の第二の都市よ」
俺はその言葉を反芻する。異世界に転生したとは思っていたが、国の名前を聞いてもピンとこない。
「首都スフィアと隣国の大煌帝国から流れ込んできたならず者たちが集まって、ここが形成されたわ。法と秩序は表向きだけ。実際は、三大マフィアがこの街を支配しているの」
「三大マフィア?」
「そう。クリスティアファミリー、四龍会、ケールファミリー。この三つがアリアンテを牛耳っているわ」
アリスは淡々と説明を続ける。
「まずは四龍会。帝国系移民たちによって成立したマフィアね。帝国からの支援は“表向きにはない”ことになっているけど……まあ、誰も信じてないわね」
帝国系移民のマフィアか……。もし帝国から本当に支援を受けているなら、相当な力を持っているというわけか。
「次にケールファミリー。ここが一番歴史の長いマフィアで、聖教会と繋がっているの。綺麗事を掲げる教会が、裏ではマフィアと取引してるなんてね」
確かに違和感はあるが、裏社会と宗教が絡むのは珍しくないのかもしれない。
「そして最後に私たち、クリスティアファミリー。ここ数年で急成長した新興マフィアよ」
「新興……ってことは、昔からある組織じゃないのか?」
「ええ。でも勢力拡大のスピードが異常なのよ」
「ボスはどんな人物なんだ?」
「クリスティア様。あの人の力があったから、ここまで成り上がったの。詳細は話せないけど、ファミリーの誰もがあの人の強さを認めてるわ」
アリスの口調が少しだけ引き締まる。その表情から、ボスであるクリスティアの存在がどれほど絶対的なのかが伝わってきた。
「ボスの下には五つの部隊があるの。私が率いるアリス隊も、その一つよ。他に聞きたいことはない?」
「能力や魔力について知りたい。アリスも何か能力を持っているのか?」
「魔力はあなたのような例外を除けば、大小あれど皆持っているわね。魔力があれば魔導銃などの魔道具が使えるわ。能力は一部の人間しか持たない個人に固有のもので、魔力を使用して発動するわ」
アリスが一息ついて続ける。
「私の能力に関しては秘密よ。私は表向きでは非能力者ということになっているわ。今のあなたに言えるのはここまで」
「せっかく仲間になったんだから、教えてくれても……」
「この世界で生き残りたければ、切り札は隠し持っておくものよ。裏切りなんて日常茶飯事なのだから」
確かにそうだな。そう思ってカイトはうなづいた。
「俺の能力も隠した方がいいだろうか?」
「魔導銃も持てない特殊な能力なんだから全てを隠すのは厳しそうね。あなたの血が魔道具を破壊することは隠しておいてもいいんじゃないかしら」
「さて、そろそろうちの隊のメンバーと顔合わせでもしましょうか。呼んでくるわね、少し待ってて」
そう言ってアリスは俺を残して部屋を出ていった。
「さて、カイト。あなたもアリス隊の一員になったことだし、自己紹介しましょうか」
アリスが腕を組みながらそう言い、俺の前に三人が並ぶ。一人の少女と、見覚えのある二人の男だった。
「カイトだ。相手の能力に触れるとそれを無効化する能力を持っている。この街に来たばかりで未熟なところもあるだろうが、よろしく頼む」
最初に一歩前に出たのは、金髪ロングヘアーの猫耳少女だった。
「私はエレナ! 能力は『獣化』だよ!元々獣人なんだけど、獣化すると、身体能力がグンと上がるの。爪とか牙も鋭くなるし、ちょっとくらいの傷ならすぐ回復しちゃうんだ! 」
エレナは自信満々に胸を張る。
「よろしく……頼りにしてるよ」
「ふふっ、いい返事!」
元気いっぱいなエレナに圧倒されつつ、次に赤茶髪の男が前に出る。
「グレンだ。俺の能力は『火球』。その名の通り、炎を操る能力だぜ。よろしくな」
炎を操るのか!かっこいいな。これぞ異世界の能力って感じがする。
「こちらこそよろしく頼む」
最後の黒髪の男――リストが静かに前へ出た。
「リストだ。能力は『魔力探知』。魔力を感じることができる程度の能力さ。よろしくな」
魔力
「こちらこそよろしく」
「で、もう一人いるんだけど、今日は休暇なの」
エレナが補足する。
「ふーん、どんな人なんだ?」
「リシュタルテっていう子。無能力なんだけど遠距離から正確に狙撃する凄腕スナイパー!」
「それは凄いな」
そしてアリスが口を開いた。
「とにかく、これがアリス隊のメンバーよ。カイト、あんたも今日からこのチームの一員。ちゃんと覚えなさい」
「ああ……よろしく頼む」
異世界マフィア英雄譚 〜転生先は犯罪都市でした〜 @kinosan3
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