地に足をつけて
そばあきな
地に足をつけて
時々、友人には羽が生えているのではと思うことがある。
幼少期、大事故により生死の境を彷徨った末に生還した結果、人よりも身体の傷の修復が異様に早くなった友人は、その丈夫さを活かして人からの頼み事を多く受け持っていた。
自分の身体を顧みず、他者の頼みを叶える様子は、どこかフラフラとして、地に足をつけていないような気がしてならなかった。
「人の役に立っているとさ、生きているって実感しないか?」
「いや全然」
「そうかあ。あ、新しい蛍光灯ちょうだい」
「ほい」
俺の返答の雑さを大して気にしていなさそうに、椅子に登ったままの友人は古い蛍光灯の代わりに新しい蛍光灯を受け取る。
先ほど掃除をしていたクラスメイトに蛍光灯の取り替えを頼まれ、手頃な椅子を持ってきた俺たちは教室で作業を行なっていた。
そのクラスメイトは小柄だったから、自分より身長の高い友人に頼んだのだというのは理解できる。
しかし、その時同じ場所にいて友人と同じような身長をしている俺ではなく、目の前の友人を選んだのには、やはり友人の体質が関係すると思った。
「ていうかなんだその椅子は。どこか緩んでるんじゃないか?」
「探したらこれしかなかったんだよ。まあ大丈夫だって。割と俺の身体は丈夫だから……さ……ッ!」
フラグ回収が早すぎる、なんてツッコむ暇もなかった。
さっきからミシミシと鳴っていた椅子の一部が折れ、友人の身体が傾いていく。
友人は、傷がすぐ治るとはいえ、痛みを感じないわけじゃない。
高いところから落ちれば、それだけの痛みを友人は味わうことになる。
――だから目が離せないんだ。
咄嗟にその下に滑り込むと、次の瞬間には強い衝撃と派手な音と共に、俺たちは倒れ込んでいた。
大の男の一人分の重みを感じながら、俺はぼんやり考える。
こんなに無鉄砲なくせに、どうして友人には、衝撃を和らげる羽が生えていないのだろうかと。
「えっ……おい何してんだ、大丈夫かよ!?」
俺を下敷きにするようにして倒れた友人は、焦ったように俺から降りて肩を揺さぶった。
見たところ怪我らしい怪我もなかったようだ。そこはよかったと思うが、揺さぶられると視界が揺れて少し気持ちが悪かった。
自分よりも俺の心配をする友人に、俺は小さくため息をつく。
「じゃあもっと人間らしく地に足をつけていろ。フラフラしてんじゃねえ」
そう言ってデコピンをすると、友人はばつが悪そうに目線を逸らし「痛覚はあるんだから優しくしろ」と呆れたような声で笑った。
地に足をつけて そばあきな @sobaakina
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