宇宙船未来号地球行き
サメサメ伯爵
ゴミクズと余り物
昔、戦争があった。
自由を求めた人々と
平等を求めた人々と
そして人は死んでいった。
自由、平等、そして平和を求めて死んでいった。
しかし人は滅びず、そしてたくましく生きていた。
どれだけ醜く、そして意地汚くとも生きていれば価値がある。
───────────────────────────
「生の女の子に触りてーなー、毎日美人をとっかえてさー」
「レベルDの思想に抵触しました。人格の消去を開始します」
「待てバカやめろ!思想と欲望をごちゃまぜにするんじゃない!!」
宇宙船、ディープ・マイ・レッド・ハート号(名前ダッサ...変更させろよカスAIが...。)の船長席で俺は座りながらぼやいていた。ここ数日ひたすら移動するだけであまりにも暇だ。外を眺めても船を歩き回ってもなあんにもねえ。死にかけたときにたまたま拾ったこの船、必要な機能以外ほとんど無いつまんない船だ。天秤共の理想がこれか、つまんねえし名前もダサいし...しかも搭載されてるAIときたらポンコツときた。こないだなんて折角集めたミュージック・ライブラリのフォルダをバラバラにしやがったし碌に謝りもしねえ。
「あー!!暇だ!!ガーベッジ!!なんか話をしろ!!」
「かしこまりましたダスト様、ではレベルD思想についての詳しい解説を」
「やめろ!!ポンコツからデブリに格下げされたいか!!」
くそう、従軍時代のほうがまだストレスはなかった。
俺は船長席から立ち上がりレーダーと光学望遠カメラが設置されたコントロールパネルを眺めた。レーダーは音もなく回転していたがその瞬間、ピコーンという音と共にいくつかの残骸とデブリを感知した。
「予定時刻まであと30時間はあるはずだが」
「おそらくデブリの方も動いていたのでしょう、重力装置の破損により停止が出来なかった残骸だと思われます」
「けっ、その可能性も考慮に入れて航路を計算しろよ間抜け」
「レベルDの思想に抵触し───」
「出るぞ、近宙の電波干渉と新しいデブリがあったら報告、それと一番大きい残骸にアームアンカ―を射出、固定しろ」
「かしこまりました、それともう一つご報告が」
「なんだ」
「一部の駆逐艦のバトルシステムが生きています、破損具合から動く可能性は低いですが警戒を厳としてください」
「そうか」
返事をした瞬間少し離れた位置の駆逐艦の光が一斉に灯った。
「危険です、すぐに退避を提案します」
「やっぱ頑丈だなぁ、あれは」
「すぐに退避を」
「落ち着け、友軍信号を発しているこの船に砲撃は来ない」
駆逐艦はしばらくの間ちかちかと光を点滅させた後数十度回転し、そして虚空に向かって主砲を放った。そして光が消え、動かなくなった。
「燃料切れを確認、デブリになりました」
「何を撃ったのやら、まあいい行くぞ」
俺は防護服を着た後、ジェットパック、拳銃、予備の弾倉、回収用のバッグを持って宇宙船の下部ハッチからとびだした。
一番大きな残骸は宇宙戦艦の残骸で、周囲には小型の駆逐艦や補給艦の残骸も漂っていた。どれも砲撃を受けた爆発の跡や、溶断の後がくっきりと残っていた。
「悪く思うなよ」
爆発の跡から戦艦内部に侵入した。中には小さなデブリが大量に漂い、所々火花を散らす配線や凍った肉塊だらけだ。
「弾薬室は大丈夫そうだな」
通路を進み、一つの部屋の前に止まった。回収用のバッグの中からレーザーカッターを取り出し、ドアの隙間に照射し続けた。ジジジという音が数秒なった後、ドアはごとりと外れた。
「白兵戦はなかったか」
レーザーライフル、ハンドミサイル、マシンガン、セーフティーを確認して次々とバッグの中に放り込んだ。さて次は食糧庫に...
「ダスト様」
カスから通信がきた
「なんだ」
「救難信号をキャッチしました」
「なに?」
救難信号?......他の生存者がまだいたのか?この世界に?
「確認に行く、座標を送れ。あと救難船の情報もよこせ」
座標は、結構遠いな...それにこの船は...外征航路船?コードネームは未来号か。大層な名前だな、俺たちがもっとふさわしい名前を付けてやろうか。
「燃料の補給をしてから発進する、調査ドローンを補給艦の残骸に送れ」
「補給に5分ほどかかります」
「じゃその間に食料を頂いていこう」
───────────────────────────
「補給が完了しました。食料、燃料、武器、ともに万全です。しかし個人で所有できる量を110%オーバーしています。レベルCの思想に反する恐れがあります」
「黙れ、各種チェックリストに不備は無し。メインエンジン再始動」
「メインエンジン再始動確認、レーザーチェッカー完了。周辺デブリの脅威レベルはE、Cクラスの破片も存在しません。高速移動開始可能です。」
「よし、メインエンジン、フルスロットル。10秒後メインエンジンをカットし慣性移動に切り替える。」
巨大な4つのバーナーが青白い炎を吹き出し、宇宙船は動き出した。予定時間は3時間。
「外征航路船、未来号の情報は何かあるか」
「この船のフォルダを確認したところ類似するデータが見つかりました」
「フォルダ滅茶苦茶になってないだろうな?」
「この船と同型、もしくは発展型です。形状、推進機が酷似しています。中々いい船ですね、私にぴったりです」
「ほう...じゃ、場合によっては破壊してパーツを頂くか」
「いいアイデアですね」
「...お前いつもみたいに思想がー、レベルが―っていうんじゃないのか?」
「私はこの船です、私が生きるのならば他者から奪うのは構いません。まあ別にあっちの船にとりついても構いませんが...まだあなたには私が必要でしょうし別にいいですよ」
なんてやつだ...心がない...というかこいつ自分が大事とかいう感情があったのか、こわ...
そうこうしてるうちに救難船が近づいてきた。
なるほど、似ている。形状は殆ど一緒...そして船後部に穴が開いている...溶断のあとか...ん?これは...
「さっきの駆逐艦、この船を感知したんじゃないか」
「恐らくそうでしょう。距離、被弾痕、信号のタイミングはピッタリです」
「全く...最後に余計な仕事を...これだから兵器は...生体反応は?」
「故障でなければ50程確認できます」
「...あの規模で50は無理だろう、仮にいても全員は助けられん」
「あなたも51人目になるのでは?」
「臨検を行う、緊急用固定アンカー射出、レスキューポイントを識別し設置しろ。製造元は同じだろうし任せるぞ」
「問題ありません。アンカー射出、宇宙用PBB固定完了。艦内に空気を確認、濃度基準値以内です」
「念のため防護服と武装、小型の探査ドローンも3機持っていく」
「船のAIとコミュニケーションが取れません、注意してください」
「あいよ」
俺は船の下部緊急用ハッチを開け、狭いトンネルを潜り抜け未来号の緊急ハッチのドアを掴んだ。
「ゲートロック解除申請、フレイヤ条約第二条に則りBクラスの救助活動を開始する」
「ザザ...コンファーム...ザザ」
ゲートが開き、内部に侵入した。ドローンは敵の信号を感知していない。銃を構えながらゆっくりと船長室に向かって歩き始めた。
(船内はやはり同型か...天秤共の残党じゃないことを祈るが...)
一つの扉の前に立ち、一呼吸を置いた後扉の中に突入した。
「救難信号を発信したのはお前か」
席に座っていた誰かは立ち上がりそして俺の方に歩き始めた、そしてそいつは
「…あなた、人間?」
「へぇ...美人じゃねぇの」
中々の上物、こいつはいいや。できたら持ち帰ろう。
「救難信号、は、私が、打ち、ました、届いて、よかったです、人間」
やけにかたこと話すソイツはカチリ、カチリと金属のような足音と共に近づいてきた。
俺はひどくがっかりした。
...なんだ、こいつ人間じゃない、ロボットだ。いやアンドロイドか。ため息をつきながら俺は銃をホルスターにしまった。
「私、サプラス」
「ダストだ、お前こんなとこで何してんだ」
「人、運んで、る、皆、しあわせ」
「人を運ぶ?」
「うん、いっぱい、は、こぶ」
「人に会ってもいいか、確認したい」
「い、いよ、こっち、に、来て」
言われるがままサプラスの背中を追いかけた。所々穴が開き、本来人のような肌もはがれ、シリンダーとコードが所々見えている。ボロボロだ、戦場帰りか?修復もしてないのか。
どこか不気味な雰囲気の正体に気づいた。生活感が全く無いんだこの船は。誰かがガラスを触った痕も、足跡も、小さな傷跡も何もない。不信感がぐるぐると頭の中を駆け巡る。サプラスとかいう奴は気にも求めてはいないが...しばらくして貨物室の前にたどり着いた。50人もいるならここはスシヅメって状態だ。だがロックを解除して飛び込んできた様は戦場で怖いもの知らずだった俺ですら一瞬ビビるようなものだった。
「こいつは...」
謎の液体がたっぷり詰まった巨大なカプセルがずらりと並び、中には裸の人間が入っていた。どれも若く、20かそこらの男女が大量に置いてある様は正直気色が悪い。
「生きているのか」
「仮死、状、態」
「コールドスリープか...」
ちらっと情報を聞いたことはあるがまさか実現していたとは...
俺はガラスのカプセルを手で撫でながら歩き回った。男に興味はねぇ女だ女の体を見せろウヒョー
「それ以上見たら殺しますよ」
「待て、ガーベッジなぜおまえの声が聞こえるんだ」
「サプラスが権限の一部を譲渡してくれました。ダスト様、それ以上見たら」
「わかった!彼女たちの尊厳を自身の名誉のもと傷つけないと誓う!」
はあ...自由な惑星に行って誰もいない草原で寝っ転がりてぇ...まだ残ってたら...
「ん?この船のAIとコミュニケーションは取れないんじゃないのか?」
「この船に専属AIは搭載されていませんでした。しいて言うならそこいいる
「このひ、と、たち、運ぶ、やく、わり、私、の」
サプラスは両手をきこきこと振り回しながらあたりを駆けた。ぱたりと一回転んだあとおきあがりまた俺のところに来た。
「でも、ふ、ね、壊れ、た、な、お、す」
「キャノンの直撃だったな...いっちゃなんだがあれの修復は無理だぞ」
「え、え、え、???」
「確認していないのか?完全に大破、いや全損しているどう頑張っても修復は無理だ」
サプラスは少しの間フリーズした。そして子供みたいにうろたえた後カチャカチャと俺のほうに駆け寄った。
「お、お、お、おね、が、い」
サプラスは弱っちい力で手を握った。
「人、も、う、いな、い、あれ、さ、いご、なくな、る、だめ」
「...そうはいっても...大体この船はどこに向かっているんだ」
「地球」
地球
人類の生まれたとされる星、はるか遠くにあり、もはや今では神話の星
「実在するのか?」
「みつ、けた」
「距離は」
「百、兆、ぜた」
...百兆ゼタ.........か...
「どう思うガーベッジ」
「神話では確かにそのような記述はあります、しかし真偽は不確かです。送り出した人工衛星も帰ってきたものはありません」
「そうか、では真偽が不明な神話のために50人もの人間を高価なものに詰め込んで旅をしてるってことか、なんだろうな、バカなのかな」
俺は馬鹿馬鹿しくなった。今すぐこの船からかわいこちゃんだけ目覚めさせて宇宙船ハーレム号でも作った方がはるかに生産性と確実性がある、ああアホらしい、なんなんだよ。
「真偽、分か、らない」
「で、も、皆、いなく、なる、よ、り、可能、せい、賭けた、い」
「人、が、そうした、みた、い、に」
「...可能性なんて言葉は飾りだろうが」
俺はサプラスの手を振り払い背を向けた。
「こんなバカなことに手を貸せるか、帰るぞ」
「...賢明です、というかそもそも修復が不可能です」
俺は貨物室のドアを開けた
「わ、た、し、あきら、めな、い」
ふいにサプラスの声が聞こえた。
「だっ、て、がんばれ、ば、なんと、か、なる、って、だか、ら、」
俺は声を無視して自分の船に戻った。
────────────────────────────────────
宇宙船に戻り、窓の外をぼーっと眺めた。後ろがズタボロの宇宙船は静かに宇宙に浮いている。
「まだ行かないのですか?」
「行く当てもないだろう、周辺をチェックしてから出発する」
「サプラスと船が気になるのですね」
「......」
あいつは一人で外に出て宇宙船の修理を始めた。誰が見ても不可能だし実際不可能だ。でもあいつは機械のくせに合理的な判断もできずに修復をしている。
________
「真偽、分か、らない」
「で、も、皆、いなく、なる、よ、り、可能、せい、賭けた、い」
「人、が、そうした、みた、い、に」
________
「.........」
「この船はあれと同型だよな?」
「はい、しかしデータを確認したところ生命維持装置や外装の素材に大きな変化が見られます。理論上100兆ゼタの旅にも耐えられる設計です」
「とんだテクノロジーだな...エンジンは?」
「構造は全く同じです。破損具合を確認したところこの船からエンジンを移植すれば航行の再開が可能です」
「...」
「...」
「気になるのですね」
「...うるせぇ」
フフフとふいに笑い声が聞こえた。こいつが笑ったのか?
「ダスト様、私は確かに規格落ちのAIです。人ですらしないミスも犯す時もありました。」
「でも、それでもなんとかなりました。戦争が終わって、人々が散り散りになっても、あなたと出会い、そしてまだ生きている」
「どれだけ低い可能性でも、きっとなんとかなりますよ」
「ポンコツがいっちょ前に話すんじゃねぇよ」
何を急に偉そうに...
「まさかあのボロボロの人形に同情でもしたのか?」
「」
でもま、そうだな。かわいい子を見捨てるのも気が引けるしな。やれやれ、ダスト様がお手伝いをしてやりますか。
───────────────────────────
彼女に心があればきっと泣いていただろう。頑張って、頑張って、直しても傷は塞げず、パーツも足らず、それでも動き続けるのは彼女にあきらめることが出来ないからか、それとも失敗を許されてないからか、それとも...
(修復、でき、る...?)
キコ、キコ、キコ
(みん、な、死んじゃ、う?)
カチ、カチ...ボン!!!
燃料に引火したのか、スラスターの一部が爆発し、彼女は吹き飛ばされた。
(あ、あ、あ、あ...あ...)
いやだ
離れていく
何もできないで終わる
いやだ
いやだ
いや......
ドサッ
(...?)
何かにぶつかった...?何に?
「やっぱり俺って優しいからさ、見捨てられねぇのよ」
後ろにいたのは、諦めた人、でも立ち向かうことにした人。
「やるだけやろうぜ」
.........あ...あ...
「...あ...あり、がと...う」
───────────────────────────
「ディープ・マイ・レッド・ハート号の後部ユニットのオート分離は可能ですが未来号はギアユニットの損傷により不可能です、手動で解除、もしくは破壊してください」
「解除は無理だ、破壊する。爆弾を仕掛けてタイミングを合わせて起爆すりゃあ無傷で本体から分離が出来る」
傷跡から小型ドローンを侵入させ、爆弾を仕掛けた。しかし一部、パイプや通路が破損している箇所は塞がれており、その場所に向かってバズーカを打ち込む必要があった。
一通り爆弾を仕掛け終わった後、サプラスと共にディープ・マイ・レッド・ハート号に避難し、そして爆破した。後部ユニットの大多数の部品は粉々に砕けスペースデブリと化したがまだ少しの残骸が残っていた。
「接続基部をレーザーで切断するからその後アンカーで引きちぎってくれ」
「かしこまりました」
未来号の後部ユニットの一部に再度向かい、レーザーを照射した。周辺にはさっき爆破した破片がいくつか漂っていた。
「計算を間違えたか?」
本来すべての部品が綺麗に取れるはずだったのになぜか少し残っていた。一部の爆弾が起爆しなかったのか...?その可能性に気づいた瞬間、身の毛がよだち俺はその場をすぐに離れた。その瞬間、デブリに紛れた爆弾が遅れた起爆した。
俺は高速で宇宙に投げ出された。幸い防護服に傷はない、だがこのままでは...まずい!
ガシッ
「だ、い、じょう、ぶ?」
アンカーにしがみついているサプラスが俺の手を掴んだ。
「...ああ」
健気に頑張り、諦めず、前に進み続ける...
...ああ、こいつやっぱりかわいいな...
───────────────────────────
「ユニットの分離を確認、ディープ・マイ・レッド・ハート号、プロトコルG5を実行。最終確認」
俺は大きく息を吸い、そして吐き出した。
「確認完了、メインエンジンおよびスラスターの譲渡を開始」
「コンファーム、なお譲渡後は予備推力システムが作動しますが性能は80%ダウンします」
一応動くことは動く、ならいい。どうせなんとかなるさ
「...一部システムにエラー」
「なんだ」
「外部ハッチ、オープンできません」
なに?冗談じゃない、じゃあ...
「じゃあ誰があの船を動かすんだ」
「ハッチは物理的に損傷した模様、おそらく先ほどの爆発で衝撃が内部に響いた模様、フレームと装甲に問題はありませんが内部のドアコンピューターが多少狂った模様...スキャン中...外部からハッチを破壊すると航行に大きな支障が生じます」
「わ、たし、戻れ、ない?」
「.........」
「私、い、ない、と、動か、せない」
「動かす手段はまだあります」
「なんだ」
「私は未来号の内部に侵入が可能です。コンピューターにアクセスし、航行もできます。しかし100兆ゼタの航行には永続的な補助および補佐が必要です」
コンピューターにアクセス?永続的なアクセスだと?それはつまり
「つまり、君と彼女を交換するってことか」
「そうです」
「.........はあ」
俺は椅子に深く座り込み、しばらくの間天井を見上げた。
「...なぜそうしようと思った」
「その子がいるならもう私は必要ないでしょう、それにあっちの船のほうが私にふさわしいからです」
俺は思わず吹いた。
出会いも別れも、いつも唐突だ。それが面白く、そしてとても寂しい。
───────────────────────────
「後部ユニット接続完了、オールグリーン、チェックリスト照合」
「照合完了、問題はない」
「データの移行と適応が完了しました、出航可能です」
「そうか」
少しの間無言が3人を包んだ。
「わ、たし」
最初に口を開いたのはサプラスだった。
「皆、運ぶ、自分、の、使命、だと思、てまし、た」
「でも、違、った」
「こう、なるなんて、思わ、なか、った」
「で、も、こう、いうの、が、運命って、いう、んだ、ね」
運命か、そうだな人生何が起こるかわからない。機械だって予測できない。
「にしても楽しみですねー、100兆キロの旅なんて」
「お前じゃ途中で失敗しそうだな」
「何とかなりますよ」
「なん、と、か、なるよ」
「確かになんとかなるか」
なんとかなる、生きてりゃ可能性は無限大、そうさ、きっとなんとかなるのさ。
未来号のエンジンが起動し、スラスターが青白いバーナーを噴出した。
「さみしい挨拶は無しです、いってきますね」
「ああ、へましないようにな」
「最後に一つだけ、ミュージック・ライブラリを勝手に自分好みにしてすみませんでした」
俺は盛大に笑った。
「あはははは!!!お前そんな趣味なんてあったのか!!!まだ知らない事だらけだったなぁ!!!」
ひとしきり笑った後一つのデータをガーベッジに送った。
「俺のお気に入りだ、お前に分けてやる。たまに聞いて俺を思い出せよ」
「げん、き、で、私、少し、思い、だ、して」
「忘れません。ダスト様、長生きを。サプラス、お元気で」
その言葉を最後に、宇宙船は加速し、そして見えなくなった。
「さて俺たちも行くか」
「で、も、燃料、な、いよ」
コントロールパネルを確認するとエラーと燃料切れのメッセージが大量に表示された
...あのクソポンコツ...燃料まで全部持っていきやがったのか?おい戻ってこい...
やばい、え、マジでどうする...絶体絶命だ............でも
「...まあ」
俺は船長席に座って外を眺めた
「なんとかなるさ」
宇宙船未来号地球行き サメサメ伯爵 @Baron-Shark-Mouth2041
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます