第16話 ヤンギカラ トルクメニスタンより
親愛なる友へ
旅の途中でこの絵葉書を書いている。
今回は、中央アジアの秘境 ヤンギカラ に来た。
トルクメニスタンのカラクリ砂漠を抜け、風に削られた燃えるような赤い崖が連なるこの地に足を踏み入れると、まるで火星に降り立ったかのような気分になったよ。
ヤンギカラの名前はトルクメン語で「燃える城壁」を意味する。昔、この地は カスピ海の底 だったそうだ。
大昔の海底が隆起し、何百万年もの風と雨が彫刻したこの風景が生まれた。
現地の人々は「炎の谷」とも呼んでいる。
夕暮れ時、太陽の光が崖に差し込むと、まるで燃え上がるように赤や紫に染まる。
その神秘的な風景には、古くから 精霊が宿る と信じられているらしい。
旅の途中、僕は バルハン という小さな村でトルクメン人の家族に招かれた。
砂漠を越えようとしていた僕に、彼らが「日が沈む前に食事をしなさい」と声をかけてくれたのがきっかけだ。
彼らの家は伝統的な ユルタ(遊牧民のテント) で、外は乾燥した大地が広がっているのに、中はとても居心地がよかった。
主人の アクムラト さんは、ヤンギカラ周辺でガイドをしているそうだ。
彼は、僕にこの地の伝説を語ってくれた。
「昔、この谷には 燃える石 があった。
旅人がそれに火をつけると、一晩中燃え続けたんだ」
と彼は語る。
実際、トルクメニスタンには 天然ガスが豊富 で、ダルヴァザの「地獄の門」のように、地中から燃え続ける場所がある。
ヤンギカラにも、そんな神秘的な場所があったのかもしれない。
夕食には、トルクメンの伝統料理
「チョルパ(ラム肉のスープ)」 をいただいた。
やわらかいラム肉と野菜が煮込まれたスープで、優しい味わいだった。
パンのような 「チュレク」 も一緒に出してくれた。
外はカリッとしていて、中はふんわり。
旅の疲れがすっかり癒えたよ。
翌朝、村を出る前に 「アク・ハルヴァ」 という白いハルヴァをお土産に買った。
ゴマと蜂蜜で作られた甘いお菓子で、コーヒーとよく合うそうだ。
帰ったら君にも一つあげよう。
旅の終わりに
ヤンギカラは、ただの景色の美しい場所ではなかった。
そこには、人々の温かさと、歴史や伝説が息づいていた。
アクムラトさんは「また来いよ」と言ってくれたけれど、この場所の夕焼けと、あの温かいチョルパの味を忘れられない限り、僕の心はずっとここにある気がする。
いつかまたこの大地を、トルクメニスタンを訪れるだろう。
では、友よ、また次の旅で。
友より
絵葉書の物語〜シルクロードからあなたに @masamasa0930
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