第15話 バルカナバート トルクメニスタンより
親愛なる友へ
この絵葉書を見てくれ。オアシスのようなバルカナバードの風景が描かれている。
緑の木々と温泉、そして遠くに広がるカラクム砂漠。
ここはトルクメニスタンの中でも、少し不思議な空気を持つ街だった。
バルカナバードは古くから温泉地として知られ、かつてシルクロードの旅人たちが疲れを癒した場所だ。
今も国内外から湯治客が訪れる。
僕も試しに「モリ温泉」という地元の鉱泉に入ってみた。
鉄分を多く含んだ赤茶色の湯で、肌にじんわりと染み込む感じがした。
隣にいた老人が
「この湯は100年先まで命を延ばす」
と誇らしげに言っていたよ。
湯上がりに市場を歩いていると、ひとりの少女に声をかけられた。
名はアゼリ。
彼女は母親の手伝いで、自家製の「チャル」という発酵したラクダのミルクを売っていた。
好奇心で飲んでみたら、強烈な酸味に驚いた。
でも、妙にクセになる味だ。
「最初はびっくりするけど、これを飲めば砂漠でも強く生きられるの」
と彼女は笑った。
アゼリの母親が、夕食に招待してくれた。
家では「イシュケキリ」という伝統料理が出された。
小麦とヨーグルト、肉を煮込んだ料理で、優しい味わいだった。
食事のあと、彼女の祖父が語ってくれた話が印象的だった。
「バルカナバードは、砂漠の中の贈り物だ。ここに湧く水は、昔から旅人を救い、王たちを癒してきた。お前もこの水を飲み、この地に触れたのなら、またいつか戻ってくるだろう。」
別れ際、アゼリが小さな瓶に温泉の水を汲んで渡してくれた。
「これを持っていれば、旅の無事を祈れるよ」と。
この街の人々の優しさと温泉のぬくもりを、君にも伝えたくて、この絵葉書を選んだ。
また別の街から便りを送るよ。それまで元気で。
友より
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