三題噺「忘れられたお守り」「流れ星」「一枚のチケット」
Zen傅太郎
三題噺「忘れられたお守り」「流れ星」「一枚のチケット」
神はお怒りだった。お守りを天に返す人が減っていたからだ。お守りの力は、一年もすれば失せてしまう。抜け殻となったお守りは、火に投げ込み、天へと返さねばならない。しかし多くの人は、日々の忙しない暮らしの中で、お守りの存在を忘れてしまう。
世界にはそうして、存在を忘れられたお守りが溢れていた。
神の怒りは、流れ星となって地に降り注いだ。人々はその一瞬のきらめきに、願いが叶うように祈った。神はそのようすを見て、ますます怒りを強めた。しかし、怒りは届かなかった。もはや信仰はかたちばかりで、神と人の関係には、深い断絶があった。
ひとりの男の子だけが、神の怒りに気づいた。天啓だった。乗り物好きな男の子は、神様に会いに行けるように、一枚の手書きのチケットを用意した。
その晩、長患いの果てに、男の子の命は尽きようとしていた。彼は自作のチケットで、神の元へと向かう列車に乗った。乗客は彼ひとりだった。手荷物は、忘れられた数々のお守りに込められた祈りと、願いが叶っても、叶わなくても、人々がその胸の奥底に密かに眠らせていた、神への感謝の気持ちだった。人は神を忘れたが、忘れても、失われていないものがある。男の子も、自分が届けたものが何か、よくわかっていない。ただ無邪気に、それらのすべてを神へと届けた。
神は時を超え、赦し、そしていずこへともなくその身を隠された。
三題噺「忘れられたお守り」「流れ星」「一枚のチケット」 Zen傅太郎 @zendentarou
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