旅鳥のぼくら ルイスとおかしな魔法のランプ!

たいやき

目覚めるとそこは…








「はっ……………!」










目を覚ますと、白い三日月に薄紫色の淡い夜空が広がっていた。


起き上がると、砂漠の上で寝ていたことに気づく。


ルイスは記憶を遡るが、あまり納得ができなかった。


同じようにエディとオリビアも目が覚め、周りの景色を見て漠然としていた。


人もおらず、辺り一面が砂漠だった。



「歩いてみよう。誰かいるかもしれない。」


ルイスたちは立ち上がり、果てしない砂漠の上を歩いた。



何時間歩いても、空の色は不気味なまま。現実では無いような不思議な感覚である。



もう少し歩くと、山影が見えてくる。


ルイスたちは走って向かった。


近づいてきた瞬間、突然大きな穴に落ちてしまう。







ヒューン、ドガン!








砂漠の下は洞窟になっていた。


「いたた…、こんな所に、穴?…二人とも、大丈夫?」


「うん。平気。」とオリビアは言った。


目を追うと、エディはオリビアの下敷きになっていた。


「ビ、ビアちゃん…!重い!降りてッ…!」


「あ〜、女の子に重いって言った?」


「たたたた…やめてぇえ!!」


オリビアは重心を下げて、エディを痛めつけようとする。



「…!ねぇ、見て。」


ルイスの言葉を聞き、エディたちは辺りを見渡すと、金銀財宝が洞窟内を輝かせていた。


ルイスたちはついうっとりしてしまう。


財宝を手に取り、目を輝かせる。


「かぁー!オレの夢がぁ…こんなとこで叶っちまうのかよぉ!誰か酒くれぇ〜…。」


エディは涙を流した。


オリビアは、ルビーの指輪とダイヤモンドのネックレスを試しにつけてみる。


「…。」


「お〜ビアちゃん!お城の姫様みてぇだなぁ?いかしてんぜ!」


オリビアはエディの言葉で冷め、身につけていた宝石を外す。



「ワンワン!」



「ルナ?」


ルナはランプを口にくわえながら、ルイスたちの元へ走ってきた。


「ルナ、どうしてここに…。」


「何か持ってるよ?」


オリビアはランプを手に持つ。


「はっ…嘘だろ!」


エディはオリビアが持つランプを奪い、驚きの表情を見せる。


「どうしたの、エディ?」


ルイスは問いかけるが、エディは黙ったままだった。


沈黙が続く。



「こ、、こ、こ、これは…













魔法のランプだぁあ!!!!!」










「魔法のランプ?」


「は?」







「なんだあんたら!知らねぇのか?このランプがどんだけすげぇものかをよぉ?!」


首を振る二人。


「『アラビアンナイト』の存在は聞いたことあるだろ?その物語の一つ『アラジンと魔法のランプ』は、古いランプをこすると、ランプから大きな魔人が現れて、どんな願いも叶えてくれるんだぜぇ?そんで、ランプをこすった者は貧しい生活から逃れ、姫様と幸せに暮らしたんだとよ?」


「それ、空想のお話でしょ?そのランプと何の関係があるの。」


オリビアはエディに聞く。


「オレたちは大きな穴からこの洞窟にたどり着いた。金銀財宝の中、ランプを見つけたってことはだなぁ…オレたちがご主人様ってことだろぉ?!オレ勝ち取ったぜぇ!ふぁぁおー!!」


エディの喜びの声が洞窟内に響く


「は?ちょっと意味わかんないんだけど!頭おかしいんじゃないの!」


「は〜…僕たち、凄いもの見つけちゃったんだね!」


ルイスたちの異常な純粋さに、オリビアは呆れる。


「るぅちゃん、擦っちゃう〜?」


「うん!擦っちゃう擦っちゃう!」


ルイスはエディに近づく。


オリビアはルナを撫でながら、つまらなそうに見る。


エディは優しくランプを擦った。


ルイスとエディはランプを見つめる。


























何も起きない。


エディは何回かこするが、魔人は出てこない。


「出てこないね。」


「だから空想のお話でしょ。それはただのランプ。」


「そんなわけねぇ!魔人よぉ…出てこぉい….。」


エディは必死にこすり続ける。



「ヨンダ?」



見知らぬ声に、ルイスたちは驚いた。


「ビアちゃん?」


「違う。私じゃない。」


「でもそっちの方から聞こえてきたけど…。」


洞窟全体を見渡すが、ルイスたち以外の人間の姿は見つからなかった。


「ココダヨ!」


また声が聞こえる。


オリビアは気づいた。


オリビアは、恐る恐るルナの顔を見る。


「ルナ…?」


ルナは舌を出してしっぽを振っていた。


「ルナなわけないだろ。」とルイスたちは笑う。すると


「ボクダヨ!」


今度こそオリビアはルナの顔を見て確信した。その声はルナだった。


ルイスたちは固まる。


「ルナが喋った〜!?!?」


三人は珍しく声を揃えた。


ルナは三人の見える位置に移動する。


「ゴメンネ!キミタチ ノ イヌ ヲ イチジテキニカリテルダケデ ハナシテイルノハ ワタシナンダ!ジジョウハ キカナイデネ!」


ルイスはルナに聞いた。


「つまり、中身は…ランプの魔人ってこと?」


「ソウイウコト!ワタシコソガ マジンサ!」


状況が一切理解できないエディとオリビア。


「えっと、僕はルイス。ルナと話せる日が来るなんて、嬉しいなぁ!」


「ボクモダヨ!」


ルナの手を持ち、ルイスは笑顔で握手をする。


「ちょっと待って!」


オリビアはルイスをルナから引き離す。


ルナから聞こえない声で話を続ける。


「どう考えても怪しすぎる。あれルナじゃないよ。」


「どうして?」


「そもそも、ルナがどうしてこの洞窟にいるの?ランプ口にくわえてたし。」


「…?じゃあ、あのルナはルナに化けた魔人ってこと?」


「分からないけど、とりあえずもうここから出た方がいい。ここに来てから気味が悪い。」


ルイスは頷く。


エディは二人の話を聞きながら、ランプを見つめる。


「ネエネエ!」


ルイスたちはルナの方を見る。


「キミタチ ネガイガアッテ ココニキタンデショ?"ヒトツ"ダケ ネガイヲカナエテアゲル!」


「あ?どんな願いも叶えてくれんじゃねぇのか?」


「サイキンノニンゲン ハ ヨクボウガ オオクテ ツカレル!」


「はぁ?!ケチだなぁ〜!」


ルナは黙る。


ルイスは「出口を探そう。」と小声で二人に伝える。


「あ…。」


エディは声が漏れる。


ルイスたちは引き下がろうとした瞬間、エディは直進してルナに近づく。


ルイスとオリビアは慌てる。


「なぁ、一個でもいいからよぉ?願い、叶えてくれねぇか?」


「イイヨ!」


エディは座って、どんな願いにするか悩んだ。


「何やってんのもう!」


オリビアは怒りながら駆けつける。ルイスもその後に続く。


「いいじゃねぇか!魔人に会えるなんてそこら辺に落ちてる財宝より価値があんだぜ?たまんねぇ〜よな!」


「そう思ってるの貴方だけだから!」


ルイスはエディの横に座る。


「エディ、何か候補があるの?」


「ああ!ん〜、悩むなぁ!」


ルイスは楽しそうなエディを見て微笑む。


「…はぁ。まったく。」


オリビアは諦めて一緒に座る。


しばらくエディは悩み頭を抱える。



「っし、決めた!」


エディは思いつき立ち上がる。


「ゴシュジンサマ オノゾミハ?」


「それじゃあ…















空を飛ばせてくれ!」














「ワカッタ!タノシンデキテネ!」


「え?」















ぼぼぼぼぼぼぼぼ


ふぁぁぁぁ


気づいた時には空の上を飛んでいた。


「きゃあああああ!!!!!」


高いところがトラウマなオリビアは、発狂をしていた。


「なんだぁぁ、ビアちゃぁん!高いとこ、こぇぇのかぁ?」


「エディのバカぁぁぁぁ!!」


ルイスはエディの体にしがみつき、目を閉じている。


「ルイス、目を開けてみろ!」


「無理!怖いよ!」


ルイスの手は震えていた。


「大丈夫だ!オレを信じろ!」


エディの言葉を聞き、ルイスは目を開く。


薄い雲の間に、ギラギラと光る青い海が広がっていた。


「ぁ…。」


ルイスはあまりの美しさに言葉が出なかった。


「あんた、カモメのように空飛びてぇとか言ってただろ?オレは叶えてやれねぇが、魔人なら叶えてくれんだろって思ってよ。」


「…!エディ、僕のために…?」


エディは目を逸らす。


「あ、…あんた誕生日だろ?プレゼントは別で用意してあるからな。」


「は〜!ありがとう!エディ!」


ルイスはエディに抱きつく。


「あ?!お、お、おい!そろそろ、そのぉ…一人で飛べるだろ?手ぇ広げたら気持ちいぜ?」


「本当?」


ルイスはエディから離れ、手を広げて自由に飛ぶ。


「はは!凄い!僕、空を飛んでるよ!」


ルイスが楽しそうに飛んでる中、エディは胸を押さえる。


「ねぇ、私もいるんだけど〜。」


オリビアは少しヤキモチを焼いた目でエディを見る。


「な、なんだよ、その目は!つーか、あんたもう怖くねぇのか?」


「うん。下を見なければね。」


「はぁん?」


エディはオリビアに近づく。


「近づかないで。」


「大丈夫だって〜、俺を信じろぉ?」


「無理。」


オリビアは素早く飛んで逃げる。


「え…」



「ねぇ、エディ!もっと色々な場所へ行こうよ!」


「…そうだな!」


三人は今だけ鳥のように飛びながら、海だけでなく、たくさんの国を眺めた。


それは、夢のような時間だった。











一ルイスの誕生日当日一


三人は相変わらず無人島で、誕生日会を開いていた。


「ルイス、誕生日おめでとう〜!!」


「ありがとう!二人とも!」


オリビアは紙袋をルイスに渡す。


「これ、プレゼント。大したものじゃないけど。」


中には、ココナッツの香りのハンドクリーム。


「この前ハワイに行った時に、お土産で買った。ルイス手が綺麗だから、手荒れしてほしくないし。」


「わ〜ありがとう!大事に使わせてもらうね!」


エディも包装された紙袋を渡す。


「これはオレからだ!」


ルイスは紙袋を受け取り、開ける。


中には、白いモコモコのマフラー。


「エディ、これもしかして…。」


「ま、手作りってやつだな!こっそりリーナたんママから編み方を教わったんだ。」


「だから少しボロボロなんだね。」


「ビアちゃん?」


オリビアの率直な感想に、エディは反応してしまう。


「ここら辺は暑いから必要ねぇけど、北の方へ行く時には使えるだろ!」


「うん!嬉しいよ!ありがとう!」


ルイスはマフラーを抱きながら笑顔で言った。


「まあ〜?頑張ったしなぁ!」


ルイスは改めて二人に感謝した。


「二人とも、本当にありがとう!僕のために色々考えてくれて。僕、迷惑かけてばっかりだけど、これからも三人で一緒に旅をしていきたいな!」


エディとオリビアは顔を見合って、頷く。


「はは!なんか、恥ずかしいね!」


ルイスは空を見上げる。雲一つない青空である。


つられて、エディとオリビアも空を見上げる。


「幸せだなぁ…。」




誕生日会はその後も続いた。


また次の日新たな出会いを求め、三人は旅に出た。















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