ある骨の記録

のっとん

巨大魚の骨

 キリング・トーア平原。

 一面赤茶けた砂に覆われた土地は、どこを見ても切なさを感じる。乾いた空気が時折、砂煙を纏い我々に襲い掛かって来た。砂煙の中は息もできない環境で、マスクとゴーグルを着けてなお、動けずにいる我々はこの土地にとって異物であると認識させられた。


 見渡す限り山と呼べるような起伏は無く、稀にごつごつとした巨大な岩が転がっている程度である。この岩がどこから来たのかは不明だが、おそらくこの砂地が隠していたものだろうとは、グラウ博士の見解だ。

 植物は1日で数え切れる程度しか生えておらず、そのどれもが樹木ではなく草と呼べるレベルのものである。生物(自らの足で動いているもの)は、掌に乗る程度のトカゲを2匹確認できた。


 野営地から西に300m歩いた場所に、巨大な生物の骨を発見した。

 砂地から突き出した骨は男性の太腿ほどの太さで、グラウ博士の背を優に超える高さだった。その形状から、おそらく巨大魚の肋骨にあたる部分だと予想される。

 一部砂に隠れているものの、突き出した骨の根元に、脊椎骨と思われる部分が見えていた。地中にまだ埋まっているのかもしれない。これ以上は発掘調査が必要なため、今回の遠征では露出している部分のみの観察に留める。


 突き出した骨―――仮に巨大魚の肋骨とする。

 巨大魚の肋骨は、長い時間ここの空気にさらされたのか、表面には赤砂が付着していた。赤砂を払い除けると、砂に削られたのか表面が少しざらついているものの、他の生物の骨と大差は無い。叩けばコツコツと音を立て、少し黄みがかった白色である。


 巨大魚の肋骨の内、2本。根元から中腹にかけて巨大なこぶを持つものがあった。

 こぶは若干、他の個所と比べ赤味を濃く感じるものの、本来の骨の色か砂によるものか現時点では判別がつかない。感触は他の部位と同じであり、継ぎ目も見当たらなかった。

 他の(恐らく正常な)骨と比べると明らかに異質な形状ではあったが、こぶも骨の一部と考えられる。


 博士の見解によれば、こぶは骨折痕である可能性が高いらしい。水流の激しい場所に生息している魚類に見られる傾向だそうだ。

 ということは、この巨大魚は過去に、そういった場所に生息していたということだろうか。さらなる調査が待たれる。



・クロキ・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ある骨の記録 のっとん @genkooyooshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ