衝動
咲野ひさと
そう、いつだって
耳元で風が唸る。
ひたすらに前へ。ただ絶頂のために。
獲物を追いつめる瞬間。
一歩近づけるたびに、体中が熱くなる。
目をつけられた不運を後悔するんだな。
追いついた瞬間。
死地で藻掻く獲物との、力比べは永遠。
これが恋というものか? 周囲は視野から消え失せる。
動きを止めてやった瞬間。
勝利を味わい尽くすべく、唾が勝手に溢れ出す。
つい力が入って、床に押さえつけすぎてしまう。
たまらない。
まさにリアルな生を感じる時。
理屈じゃない。
この血が巡る限り、湧き上がり続ける衝動。
だから俺は、何度だって繰り返す。
この骨は、いわばトロフィー。
獲物が、そして俺が生きた証。
できれば飾っておきたいが、残念ながら難しい。
俺が尻尾をだす時を、虎視眈々と狙う連中。
街を歩けば、奴らの臭いがプンプンする。
だから埋めるしかない。
茂みか、砂地か。どこか誰にも見つからない場所へ。
「ほら、そろそろ俺の番だ」
邪魔が入った。だが男の言葉は重要。
彼は相棒。実行役の俺に、絶好の狩場と獲物を探してきてくれる。
力を緩めてやると、獲物は虚ろに転がった。
すかさず伸びた男の腕に、なすすべなく持ち上げられていく。
「ポチ、もう一回行くぞ!」
――――ワンッ!
宙を舞う骨めがけ、俺は再び駆けだした。
衝動 咲野ひさと @sakihisa
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