戻らないでよドクロさんっ!!

❄️風宮 翠霞❄️

ドクロさんと少女と残念な側近

 死者の国、冥界。

 なんやかんや色々とあって、そんな場所に迷い込んでしまった少女––––草葉くさば陰乃かげのは、真実の愛でしか解けない呪いによって醜い骸骨姿になってしまっていた冥界の王––––DEATH……おっと、間違えました。

 ついつい、普段他の側近と影で呼んでるあだ名で呼んでしまい……。


 う゛、うぅんっ。

 よし……やり直しです。

 とにかく彼女は、冥界の王ハデス様––––彼女風に言うならドクロさんと、なんやかんや色んな障害を乗り越えて真実の愛の下に結ばれました。


 なんやかんやの詳細を知りたい人は、その辺りについてのことはアマ◯ンプライムで有料独占配信しているので、ぜひそれを見てください。

 無料じゃないのか?

 お小遣いが欲しくて(冥界の運営費にする為に)側近全員で有料と決めました。

 ……建前と本音が逆になってたけど、気づかないふりでお願いしますマジで。


 えっと……なんでしたっけ?

 そうそう、ハデス様の呪いが解けそうだってとこでした。

 ついに今、陰乃との真実の愛を伝えるキスによってハデス様の呪いが解け––––。


「ありがとう陰乃……君のおかげで、僕にかけられていた呪いが解けた」


「ドクロ、さん……?」


 呪いをかけられる前と同じ、白銀の髪をサラサラと背中に流した紫色の瞳を持つ美丈夫へと姿を変えました。骸骨の時もそうでしたが、当然のように背が高い。


 うん、やっぱ私らの王……圧倒的にビジュがいい。優勝。まじ神。

 流石、二次元に勝てる唯一の三次元と(側近の間で)言われてるだけあります。

 Vtuberに勝てるビジュ……これが三次元ですよ?

 超絶感謝 to マイゴッド。


 ごほんっ。

 まぁ……そんな風なイケメンハデス様を前に、茶髪茶目という一般的な色味をした少し小柄な可愛らしい少女、陰乃は目を見開いてプルプルと震えている。

 見惚れて……え、見惚れてるんですよね?


 絶妙な顔をしている陰乃に、側近一同ハラハラしていると……ニコニコ顔のハデス様に向かって、彼女は真っ赤な顔で口を開いた。


「なんで人の姿になっちゃうのっ、私は骸骨姿のドクロさんが好きだったのに!!」


 およ〜〜〜〜?

(側近一同困惑でアホ面の為、アホそうな擬態語でお送りしております)


「……陰乃?」


 あ〜、ハデス様ほどの美形だと困惑しているところも絵になりますねぇ。

 目の保養です眼福です素敵です大好きありがとうございます(連写盗撮)。


「私、ずっと言ってたでしょっ!? 著作権とか心配だからぼかすけど、『美女となんとか』で野獣は野獣のままでいて欲しいタイプだって!! ……いや、まぁ、そもそも野獣の性格がアレだしあのお姫様には蝋燭の人とかとくっついて欲しいと思ってるタイプだからあくまで展開の話だけどっ!!」


 ん……。

 よし、正気に戻ったと思う。大丈夫。


「そんなの聞いてないっ」と言いたげなハデス様の顔を連写してから何事もなかったかのように胸元にスマホをなおし、そういえばそんな事もあったなぁと頭の片隅に丁重に仕舞われていた記憶を引っ張り出した。


 美女とやじゅ……『美女となんとか』の話を聞きながら、側近全員で「真実の愛って推しを愛でる気持ちじゃダメなのか」と話し合っていたから大筋を思えていなかったなんて訳じゃ決してありませんとも。ええ、決して。


 そんな残念な子を見るような目で見ても無駄でございますよハデス様。

 推しの表情はどんなものでも感動するだけです。

 ああ、見下すような目をありがとうございます。


「僕の側近が、いつの間にか残念仕様になってるっ……!?」


 そんな馬鹿な。

 忠誠心が高まったと言って下さい。

 ええ、冥界をIT化した際に現世の“推し活”なるものを知りまして……。

 側近一同どハマりしたなどということはありません。

 ああ、それとハデス様。もし恨むのであれば、IT化の波とそれに乗ることを決めた己とツ◯ッター改めエ◯クスを恨んで下さいね。


 にしても……陰乃、ハデス様の肌はなんなら骸骨の時より白いレベルで白いのですから、それで何とかなりませんか?

 ほらほら……細身ですし、薄目で見たらキラキラ多めの骸骨に見えないことも……ないですか?


「やだっ!!」


 嫌だったらしい。


「そもそも美形以外の人外相手に恋したら『外見を気にしない』って言われることが大半だけど別にそうとは限らないじゃんっ……私は、人よりも骨が好きだっ!!

 というか、人が嫌いだから黒魔術を使ってこっちに来たんじゃんっ、ドクロさんが人になるなんて、私聞いてないよっ!!」


 おぅ、まさかの迷い込んだ訳じゃないという新事実発覚。

 そして普通の少女だと思ってたらまさかの変人だった、と……。

 この美形よりも骸骨の方が良いって、正気ですか。


「ど、どうしたら良いの、陰乃。どうしたら前みたいに笑ってくれる?」


「ドクロさん、骸骨になって!! 骸骨じゃないドクロさんなんて、ドクロさんじゃないもんっ」


「ないもんっ」じゃねぇですよこのJK。

 もしかしなくてもハデス様を強固にドクロさんと呼んでたのは骨状態だから愛でているという意識の表れですか。

 それにしても……ふむ。

 骸骨姿なら良いのですか……。


 ハデス様、もう一回呪いかけてもらいに行きます?

 今度は真実の愛でも解けないヤツ。


「お、それは良いっ!! そうと決まればすぐに準備を––––」


 いや、ちょっとお待ち下さい。

 もしかしなくてもそうしたら、我々側近が一生この美形を拝めないのでは……?


「「……」」(ハデス、陰乃、沈黙)


 よし、側近全員断固として反対です。

 絶対行かせねぇですよ?


「側近の手の平返しがあまりにも華麗すぎるっ!!」




 ◇




 亡者によると、少女と冥王が結ばれたという知らせがあった後日。

 再び呪いにかかった王を嘆き悲しむ側近と、王と仲良く笑う少女の姿があったとかなかったとか。

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