されこうべとイナゴと月で、このような作品を書いた人を私は知りません。
イナゴとされこうべの会話もとても良い塩梅で、読みやすいのに、一切の無駄のない繊細な作品です。
人生の折り返し地点を過ぎて(作中のイナゴのように)忙しく、めまぐるしく生活しているなかで読んだこの小説が、意識がしんと澄む時間を作り出す。
この作品の硬質な光の中に一時たゆたって、そこにあった確かなものを、命が無くなっても確かにあった情景を、無言で見ていたくなる。
読んでいて、意識状態を変えられてしまう不思議な小説で、何度も時間を置いて読み直したくなります。