そのお肉をくれないか?

神田 るふ

第一幕 可愛いハンナ

 牛がたくさんいる村に、ハンナという、それはそれは可愛い女の子がおりまして、たくましいお父さんと優しいお母さん、そして、たくさんの牛たちと一緒にのんびりと暮らしておりました。


 ある日のことです。お母さんはハンナのお腹まわりほどもある、大きな牛肉を籠に入れ、ハンナに手渡しました。


「さあ、ハンナ。今日からお使いはあなたのお仕事よ。隣の町に住んでいる、ハンナのお祖母さんの所に行ってちょうだい。お祖母さんは大のローストビーフ名人。このお肉で美味しいローストビーフを作ってもらってきなさいな」


 ハンナが籠を肩にかつぎ、意気揚々と扉を開けると、ちょうど、お父さんが牧場から帰ってくるのが見えました。


「おお、ハンナ。お祖母さんの所に行くんだな。いいかい、ハンナ。遠回りになるが、道をまっすぐ行くんだぞ。近道にはなるが、決して墓場を通ってはいけない。ちょうど最近、捕まっていた強盗が檻から逃げたところだ。墓場のような場所は絶好の隠れ家だろう。見晴らしのいい道を行くんだぞ」


「わかったわ。お父さん、お母さん、行ってきます」


 お父さんに言われたとおり、ハンナはてくてくと道を歩いていきました。


 ハンナはとても可愛らしい女の子で、人間からも動物からもたくさん愛される子です。お祖母さんの家へ行く道すがら、ハンナは子犬や子猫、小鹿と出会い、たくさん遊んでしまいました。


 ハンナが気づいた時には、お日様はとっくの前に山の向こうに消えていました。


 ハンナは小さな頭で考えます。


「道を歩いて行ったら夜が更けてしまう。お祖母さんも心配するわ。そうだ、墓を横切っていきましょう。お父さんはダメだと言っていたけれど、きっと、泥棒さんもお化けが怖くて墓場には行かないはずよ」


 ハンナは墓場の門をくぐり、墓場の中を小走りにかけて行きました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そのお肉をくれないか? 神田 るふ @nekonoturugi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ