第26話 晴真と湊
回想は三人称視点で進みます。
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「俺、VTuberになる!」
そう宣言したのはセンターパートのツヤツヤした髪をした少年だった。
「はあ?」
学生服を着た湊は眉を顰める。
「だって面白そうじゃん?」
「あのなぁ晴真、そういうので成功するのは一握りなんだぞ?」
「そーゆー問題じゃねぇの!」
口を尖らせながらその少年、もとい
「第一機材とか高いんじゃないのか?」
「うっ……それは、まぁ、親に土下座するとか……」
「俺はやんないからな」
「え〜ちょっと頭下げるだけだからさぁ〜親友が困ってるんだぞ〜」
「頼むよぉ」と両手を合わせながら晴真は湊に頭をペコペコする。
どうやらやりたい気持ちは本物のようだ。
だが彼は立ち絵や編集はどうするつもりなのだろうか。湊の知る限り晴真はかなりの画伯(笑)で機械音痴だったはずだ。
「……お前立ち絵とか編集とかどうするつもりなんだ?」
「え?お前がやるんだろ?」
さぞそれが当たり前かのように晴真は答える。
湊は頭を抱えざるを得なかった。
「だって、絵上手いしパソコンとかめっちゃ詳しいじゃんお前」
「はあ?俺VTuberとか全然分からないぞ」
「そんなんこれから知ればいいんだって!さ、帰ろーぜ!」
大丈夫だ、と言わんばかりにサムズアップ晴真は湊の腕を引き教室を出ていった。
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「名前は考えたのか?」
ある日の放課後、再び二人はVTuberについて話していた。
「んー、それが思いつかないんだよな。なんか良い名前ないか?」
「うーん、田中、佐藤……」
「真面目に考えてくれよ〜」
若干拗ね気味に晴真は口を尖らせる。
「えー。そうだな……
「音無!俺音無が良い!」
湊は何個か苗字を挙げた。すると晴真はダンッと机を叩き目を輝かせながら立ち上がった。どうやら何かが湊の心に刺さったようだ。
「音無湊斗!良い名前だろ!」
「なんで俺の名前なんだよ」
「語感がなんか良いじゃん!」
こうなった晴真は最早止められないだろう。湊はそう悟ったのだった。
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名前を決めて数ヶ月たった頃、晴真のVTuberデビューへの準備は着々と進んでいた。
晴真は親に全力土下座した。最初は親も反対していたものの何週間にも渡って頼み込んだ結果、親の方が折れ条件つきで活動を許可してくれることとなった。
「次の定期テストで総合学年一位取れって……ヤバい、詰んだ……」
「いや、お前元々成績良いじゃん。ちょっと頑張れば全然取れるだろ」
「俺次の数学の範囲のとこマジ苦手なんだよ……しかも次テスト作るの高橋だし……」
「高橋『先生』だろ?ったく……少しなら教えてやれるから帰ったらウチこいよ……」
「神じゃん……いや神!湊様ぁ」
勢いよく抱きつこうとした晴真は湊の膝蹴りの餌食となるのだった。
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今月中とかいいつつも思った以上に早くできました。そして大変大変お待たせしました……。
元トップVTuber、新人VTuberとして舞い戻る。 あ @arford
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