贖罪なのか、妄執なのか。血の滲む努力で完遂される「ざまあ」

楽山「昔クラスの女子を守れなかった俺の人生やり直し。」読了。タイムリープ物ではあるものの、ガチの空手小説。主人公は高校生時代に学校のアイドルが揃って惨殺される事件に遭い、そのトラウマから抜け出せないまま病気でこの世の生を終える。


小学一年生にタイムリープした主人公の東悟は、ヒロイン達を助けるべくタイムリミットとなる高校時代の事件当日へ向けて、文字通り血の滲む努力で己の強さを追及していく。基本的に転生モノは「才能があれば努力するのにな」という人が好むところがあって(偏見)見返りの無い努力は嫌われる傾向がある。

だが、本作は才能があろうが無かろうが、それこそ殉教者の贖罪とも言えるストイックさで「その日に犯人をブチのめす」ためだけに主人公が努力していく。好きな人を守れなかったという要素があるために、この一見妄執めいた努力の日々が非常にリアルになる。

後半になると迫力満点の空手技を使った命の奪い合いとも言えるバトルが始まる。著者が格闘技経験者かは知らないが、緊張感のあるバトルシーンは読みごたえがあった。明らかにリアル寄りのガチ格闘技小説と言えるタイプの作品だが、これがカクヨムの中で黙殺されずに支持されたのは素晴らしい。次巻もあればいいとは思うが、単巻で終わっても全く違和感はない。

※角川スニーカー文庫で出版された本を読んでの感想です。

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