1コ下の美少女と一緒に"おままごと"みたいな土曜日を過ごした話【短編】

丘野雅治

第1話 妹の世話をしていると"おままごと"の感覚を思い出す

姫奈ひめな、手つなごう!」

「うん、優人ゆうとお兄ちゃん!」


 オレが手を差し出すと、姫奈ひめなの細い指がオレの手を握る。今日は妹が遠足で、集合場所の最寄り駅へ向かっている。


 オレは高2で、妹の姫奈ひめなは小3、8つ年齢差がある。オレから見て姫奈ひめなは文句なくかわいい。丸顔で、話し方も優しくて、おっとりした性格をしてる。身長は128センチ、体重は28kg、小さくてどこまでも子供らしい。


「今日の遠足って楽しい?」

「うん。ぶどう狩りして、動物さんに会って楽しいよ」


 オレも同じ小学校で遠足は覚えてる。電車で隣の県まで出かけて楽しかった。姫奈ひめなも今日は半袖シャツにズボンで動きやすい服装してる。


 うちの両親はお店を経営してて土日が忙しい。だから休日は、オレが姫奈ひめなと一緒にいることが多い。


優人ゆうとお兄ちゃんも学校なんでしょ?」

「部活あるからね」


 土曜だけど部会があるから、制服を着て学校の鞄を持ってる。この後に駅から電車で学校へ向かうつもりだ。


 今日は晴れて天気がいい。日中の気温は25度を超えるらしく10月にしては暑い。オレと姫奈ひめなは遠足の話題で盛り上がる。



  ※



 姫奈ひめなの歩幅に合わせて歩くうちに駅が見えてくる。快速は停車しない郊外の小さな駅だ。目立つのはスーパーマーケットが1軒だけ。


「あ、勇輝ちゃんだ」


 姫奈ひめなが前を歩く同級生の男の子を見つける。男の子も遠足の格好で、お姉さんと手をつないでいる。


「おはよう、勇輝ちゃん!」

「なんだ姫奈ひめなか」


 お姉さんとオレが挨拶する。


「「おはようございます」」


 お姉さんは高校生くらいで、ひと目見て美少女で驚く。うちの学校では見かけないレベルだ。


 半袖のTシャツにショートパンツでシンプルな服だ。部屋着かな。特にメイクもせずミディアムの髪も無造作だ。それでも驚くほど魅力がある。


 美少女が弟に催促する。


「勇輝、お友達を紹介して」

「同じクラスの姫奈ひめな


 男の子は照れてぶっきらぼうだ。お姉さんが挨拶する。


「姉の英里奈えりなです、よろしくね」


 姫奈ひめながオレを紹介する。


「うちの優人ゆうとお兄ちゃんです」

優人ゆうとです、よろしく」


 美少女の私服がオレを緊張させる。共学で女子高生の制服姿には慣れてるけど、私服を見る機会は少ない。特に部屋着みたいな服は、相手のプライベートを見てる気になる。



  ※



 英里奈えりなは1コ下の高2だった。彼女も同じ小学校の卒業生だけど、これまで接点はない。


 そういえば、駅前なのに他の同級生や先生が見当たらない。


「他の人たち、いないね?」

「どこかしら?」

「駅の反対側かなぁ?」



  ※



 駅の反対側にも、同級生や先生が見当たらない。

 その時スマホの着信音が鳴る。母親からの通話だ。


「母さんから」


 英里奈えりなに断ってから通話にでる。


「あんた今どこにいるの?」

「駅だけど」

「なんで駅にいるの?」

「遠足の集合場所だから」

「場所違うわよ」

「えぇ!」


 英里奈えりなのスマホにも着信があって出てる。オレは通話を続ける。


「今ってバスだから市役所前なのよ」

「何それ!」

「先生から電話が来たのよ。そこからどのくらいかかる?」

「20分くらい」

「みんなを待たせるわけにいかないわね。先生には私から連絡しておくから。そのかわり今日は姫奈ひめなのこと責任持って預かりなさいよ」

「え、ちょっと待って!」

「来客で忙しいから、何かあったらメールちょうだい」

「……わかった」


 母親が慌ただしく電話を切る。


 小3の遠足って電車の印象が強くて駅に来てしまった。失敗したなぁ。


 英里奈えりなも電話を切って、困った顔をしてる。


「今って場所が違うらしい」

「うん、私も母さんから聞いた」


 こうして、オレと、かわいい妹の姫奈ひめな、美少女の英里奈えりな、その弟の勇輝が、一緒にすごす一日がはじまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る