第5話 汗をかいている女の子は魅力的だと思う

「お姉ちゃんの学校大きいねぇ」


 姫奈ひめなが感心してる。駅から10分ほど歩くと英里奈えりなの学校だった。中学から大学まで1つの敷地にあり広い。駅に近い側が大学になっていて、英里奈えりなが大学の正門近くの地図で説明をする。

 

「このあたりまで大学の敷地だから自由に出入りできるの。このベンチにいるのがいいと思う。トイレがここで、学食がここ。何か質問ある?」

「大丈夫……、だと思う」


 奥の高校近くまで歩いて、おすすめの場所にくる。大学と高校の境目に、いくつかベンチとテーブルがある。人通りも少なくて、高校のグラウンドが見える。


「自販機があそこにあって、あと……」


 英里奈えりなが部活鞄から携帯型のゲーム機を取り出す。

「飽きたらこれね」

「さすがお姉ちゃん、用意がいいね」


「じゃ、今度は私がいってきます!」

「「「いってらっしゃーい!」」」


 みんなで手を振った。



  ※



 勇輝が「のど乾いた!」と言うので自販機で飲み物を買ってきた。


 グラウンドに陸上部が出てくる。同じユニフォームだけど、英里奈えりな一際ひときわ目立つ。


 フワッとさせていたミディアムの髪をポニーテールに結んでいる。髪型ひとつで丸顔な印象からスッキリした印象に変わる。


 陸上のユニフォームは肌の露出が多く、体型も良くわかる。見ていてドキドキする。


 英里奈えりなが周りに気づかれないように小さく手を振る。


 勇輝がそれを見つける。

「お姉ちゃんが手ぇ振ってる!」


 こっちからも手を振りかえす。内緒のやり取りしてる気分になる。


 まわりの部員たちと見比べても英里奈えりなが1番にかわいい。



  ※



 構内を散歩して、学食でソフトクリームを買って来て3人で食べた。

 

 勇輝と姫奈ひめなが少し飽きてるみたいなのでゲーム機を渡す。2人が交互にゲームをする。


 オレがグラウンドから目が離せないでいたら、勇輝に袖を引っ張られる。


「ねぇ、このボス倒せる?」

「倒しちゃっていいの?」

「うん」


 2人は同じボスに手こずっていた。手際よくボスを倒してゲーム機を返す。


「すげぇ、ゲーム上手いなぁ! お姉ちゃんゲーム下手なんだ。困ってるゲームあるから、今度うちに来てボス倒して」

「オレにできることなら助けるよ」


 そう返事すると勇輝は無邪気に喜ぶ。英里奈えりなの家かぁ……と思う。



  ※



 英里奈えりなはリレーの練習を始めていた。この天気だから、すぐに汗をしたたらせる。揺れるポニーテールに流れ出る汗。真剣に走る顔と友達と交わす笑顔。魅力的すぎて目を離せない。


 そんなオレに勇輝が声をかけてくる。

「お姉ちゃんかわいいよね」

「かわいいな」


 思わず素直にうなずく。


 その返事に勇輝と姫奈ひめなが冷やかす。

「「ヒューヒュー」」


 この2人に冷やかされても嫌な気はしない。


「勇輝だってお姉ちゃんのこと好きだろ?」

「うん大好き! お兄ちゃんも?」

「うん、オレだって姫奈ひめなもお姉ちゃんも好きだよ」


 素直にそう言ってしまうくらいには、この"おままごと"が気に入りはじめていた。

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