大好きだった犬のシロ。シロと共にあった『当たり前』な思い出の数々

 読むとしみじみと、胸が締め付けられました。

 飼っていた犬のシロが死んでしまう。焼き芋が大好きだったシロ。それをあげるととても嬉しそうにしていた思い出などがあります。
 散歩に行くことを「ヨンポ」と呼んでいたこと、主人公が家に帰ってくると手の匂いを嗅いでは舐めることをルーティーンとしていたこと。

 そんな「当たり前」だった思い出が、シロという犬にはたくさんあった。

 そして、シロの死を悲しむ主人公の『ボク』の前に、ある出来事が……。

 犬との思い出というのは、日常の中でも特殊なものなので、失った時に感じる空白はとても大きいものなのだな、と本作を読むと強く感じさせられます。

 そして物語を最後まで読み、そんな「空白」や「当たり前だったもの」が強く突きつけられ、自然と涙腺が緩むことになるでしょう。

 とてもあたたかく、切ない物語でした。