原発が儲かるしくみ

加賀倉 創作

ボロ儲けビジネス──原発──・<:⚡️

 ──原発問題。


 とにかく意見が真っ二つに分かれがちなこの問題。


 なぜこんなにも、原発論争が巻き起こるのか。


 答えは簡単です。


 原発の本質について理解している人間なぞ、原発反対/賛成を掲げる者たちの中に、1%もいないからです。


 馬鹿にしたかったり、優越感に浸りたいのではありません。


 誰も理解していないというのは、事実です。



 原発を理解するには……



 物理学、化学、生物学、医学など(分け方は色々あります)を理解する必要があります。

 どれか一つでも欠けては本質が見えません。


 物理しか知らない学者は数字や文字が得意で机上論をこねくり回しますが、実際に原発が人や環境にどう作用するのか、想像力が足りないのでわかりませんし、どんな被害が起ころうが関心はありません。


 生物学しか知らない学者は、人体への影響については理解できますが、その仕組みについて考えるとなると、物理や化学の連中に言い負かされてしまいます。


 化学しか知らない学者は、物理に明らかな学者と生物に明らかな学者との間で板挟みです。


 医学しか知らない学者は、被害を受けた患者の症状を把握して必要な処置を施すことができますが、やはり対処療法ではなく症状の根本的改善のためには、見えざる放射線の正体を知る物理・化学者の知恵を借りなければなりません。


 e=mc^2、ベクレル・グレイ・シーベルトの違い、α線・β線・γ線・x線の違い、原子核、中性子、陽子、電子、核力、核分裂、放射性同位体、物理的半減期・化学的半減期・生物学的半減期の違い、MOX燃料、蒸気タービン、揚水発電、放射線荷重係数、組織荷重係数、急性放射線障害、癌細胞、これらをどれほどの人が理解できるでしょうか(マウント取りではありません、本当にこれらを知らなければ原発の本質について理解できません)。


 他にも……


 原子力の関わる法律を理解する必要があります。


 どこでウランが取れるのかなど世界のエネルギー資源事情について理解する必要があります。


 企業がどのように利益を生み出すのか、カネの話を理解する必要があります。


 高級官僚や政治家など、政府の中枢の悪い人間の思惑を理解する必要があります。

 

 多すぎて途方もないですが……


 今回は、最後の二つ、「カネ」と「悪い人間の思惑」にフォーカスします。




 ***




 表題に、「原発が儲かるしくみ」とありますが……


 なぜ原発が儲かるのか、その理由を、簡潔に示すと、こうです。




①設定された電気料金の中に、ハナから〈利益分の金額〉が組み込まれており、つ電気は誰も(企業含む)が一定量を必ず使う「インフラ」であるから、儲からないはずがない。


②資産=「原発のための土地や発電設備、燃料、廃炉同然の設備、核ゴミなど」を抱えれば抱えるほど、〈利益分の金額〉を加算することを認めてもらえる、という法律があるので、電力会社は建てたり調達を繰り返してバカスカ資産(ゴミ含む)を抱え込む。


 結論:①と②により、原発資産の膨張に比例して、電気料金は果てしなく釣り上げられていく。




 許せませんよね。



 ①は、まぁ一京歩くらい譲れば理解できなくはないので、次で②という凶悪な仕組みについて、深掘りしていきます。




 ***




 原発は作れば作るほど儲かる。


 本当に、バカみたいな商売です。


 電気事業法という法律がありますが、その中にある『総括原価方式』なるものによって、電気料金は決定されます。


 計算式はこうです。




 電気料金=諸経費+利潤


 


 これだとおかしいところはないように見えます。

 ですが、詳細化してみましょう。




 電気料金=諸経費(減価償却費・営業費・諸税)+利益(レートベース×報酬率)




 怪しい文字が見えますね。


 解説します。


 まず大前提として、電力会社は、実態はともかく形式的には公営企業ではないので、法人税を払うわけですが、税金も料金設定に組み込んでいます。普通、民間企業においてが残らなかった場合は法人税をかける対象がないので法人税はゼロなわけですから、利益が残るか残らないかわからない状態において、しかも電気という絶対に使われるインフラ的商品を扱う中で、税金分を諸経費の中に価格転嫁できてしまうのは、ずるすぎますよね。


 ですがこれは序の口です。


 計算式の中に、〈利益〉の文字、そしてそれを構成する〈レートベース〉の文字が見えます。


 これらがヤバいです。


 〈利益〉を決めるために、〈レートベース〉なるものがありますが、この〈レートベース〉は、要は「発電のための資産」です。


 資産というのは具体的に言うと、発電所を建てるための土地、原発の軽水炉本体、各種の核燃料、送電線、研究成果、繰り返し使いまわされもはや使い物にならない環境や我々の健康に悪いだけ処分に困るだけの産業廃棄物同然の核燃料のカス、ほとんど稼働していない廃炉同然の発電設備、そして当然、一般企業にもあるような固定資産も含まれます。



(ちなみに日本は、ヨーロッパの国々からゴミ同然の核燃料を輸入して──と言うよりむしろ押し付けられて──いますが、その中身は、核分裂が可能な部分──質量数235のウランや質量数239のプルトニウムとか──がほとんど残っていなかったりするので、事実上の核ゴミ。でも儲けのタネにはなるという馬鹿げた仕組みです)



 それら資産を増やすと、〈レートベース〉部分は膨らみ、比例して〈利益〉も膨らみます。


 普通の民間企業は、ある程度の資産形成を終えたり、不況下であったりすれば、コストカットの一端として設備投資を減らしますが、電力会社に、その必要はありません。


 経営が苦しかったら、設備投資すればいいんです。


 設備投資すれば、資産が増えれば、〈レートベース〉は上がり、〈利益〉は上がるのです。


 こんな滅茶苦茶な仕組みと、簡単な商売は、常識的感覚からは考えられませんよね。


 さいごのダメ押しもあります。


 計算式の中にある〈報酬率〉を、その時々によって、都合のいいように変えれば良い(電力会社に潜む守銭◯と、キックバックや天下りを狙った政府の売国◯が、口合わせして決める)のです。


 おっと失礼、嘘です、もうひとダメ押しありました。


 加えて東日本大震災の時のような深刻な原発事故が起これば、事故処理や補償費を口実に、大ボーナスが電気料金に上乗せされる。


 言ってしまえば、事故が起きると、電力会社は儲かる大チャンスなのです(ちなみにその時政府は電力会社に助成金を出せば増税の口実も得られるというウハウハ状態です)。


 最低な仕組みですよね。


 わざと事故を起こしたり、放置・拡大させたりしているとは流石に信じたくありませんが、実際は……どうなんでしょうか。




 ***




 以上で、原発が儲かるしくみ、さらには電気料金が上がり続けるしくみを、理解いただけたかと思います。


 何度も言いますが、電気はインフラです。我々の生活に欠かせません。寒いと死んでしまうので、エアコンの暖房はつけますし、温かい料理を作ります。こうして私が文字を打ち込みネット上で真実を発信するのにも、電気が必要です。どれだけ電気料金が上がろうと、我々は各地域に一つしかない電力会社に、電気料金を黙々と支払い続けるしかないのです。電気料金の値上げは死活問題です。生殺与奪の権を他人に握られています。




 ──日本国民よ、立ち上がれ。 

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原発が儲かるしくみ 加賀倉 創作 @sousakukagakura

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