第2話 ただいま

 扉を開けた瞬間。


 君は、包み込むような声で「おかえり」と言う。


 全て察したようなトーン。

 失敗した時は優しく。

 成功した時は僕より喜ぶ。


 もう全てお見通し。

 何かあったのか読まれ不貞腐れていても、何のその。


 友達から恋人。

 恋人から妻。

 子供も生まれ家族になった今も。


 君はそれを受け止めてくれる。


 君と一緒になった日から、想いのこもった「おかえり」に何度救われてきたか。


 挫けそうな時。


 泣きたい時。


 逃げたい時。


 そんな時、扉の向こうで「おかえり」と言う君の姿が浮かんだ。


 だから、僕は「ただいま」と言う。


 僕と一緒になってくれて「愛してくれてありがとう。信じてくれてありがとう」という想いを込めて。


 これは明かしたいが、恥ずかしくて言えない。

 冴えない男の本音。

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帰る場所 ほしのしずく @hosinosizuku0723

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