第7話

転生してから27年、エアリーとテロスが俺の元に来てから、あっという間に5年が経った。二人は元気に成長し、毎日家の中を駆け回っては笑い声を響かせてくれる。だが、俺の姿は16歳のまま。変わらない自分に対する周囲の疑念を恐れて、俺たちはこの街を離れる決断をした。


「エアリー、テロス、新しい街に行くことになったんだ。」


突然の言葉に、二人は驚いたように目を見開いた。


「新しい街?」


テロスが首をかしげる。


「ここ、好きだよ。」


エアリーがしょんぼりと呟く。

胸が痛んだが、俺は笑顔で答えた。


「分かってる。でも、新しい冒険だと思ってくれないか?新しい友達もできるかもしれないぞ。」


エアリーとテロスは互いに視線を交わした後、ようやく小さく頷いた。その姿に安堵しつつも、心のどこかで申し訳ない気持ちが残った。

新しい街に着いてから数週間、この街は、前の町より工業技術が進んでいるみたいで便利なものが多く、少しずつ生活が落ち着いてきた。家の近くにある広場で二人を遊ばせることが、日々の楽しみとなっていた。広場には何の遊具もなかったが、広々とした空間が子どもたちには十分な冒険の場だった。

ある日、広場でエアリーとテロスが木の枝を剣に見立てて戦いごっこをしていた。


「覚悟しろ、テロス!」


エアリーが勢いよく木の枝を振り上げる

「うわぁー!」


テロスは笑いながら逃げ回る。

二人の声が広場に響き渡る。その様子を見守りながら、俺は木陰で腰を下ろしていた。ふと、二人が他の子どもたちに話しかけているのが目に入った。


「一緒に遊ぼう!」


エアリーが笑顔で声をかけ、テロスもその後に続く。

最初は戸惑っていた他の子どもたちも、すぐに仲良くなり、みんなで追いかけっこを始めた。二人の笑い声が響くたび、俺は自然と微笑んでしまう。

その夜、家の中で突然二人の言い争いが聞こえてきた。


「それ、私のだって言ったのに!」

「違うよ!僕が先に遊んでたんだ!」


急いでリビングに駆けつけると、二人が俺が作った木製の小さな馬のおもちゃを取り合っていた。エアリーが引っ張り、テロスが必死に手を離さない。


「おい、どうしたんだ?」


俺が問いかけると、二人は同時に俺の方を振り返った。


「父ちゃん、テロスが私のおもちゃ取ったの!」

「違う!僕が先に遊んでたんだ!」


二人とも譲らない様子に、俺は木製の馬を取り上げ、二人の間にしゃがみ込んだ。


「エアリー、テロス。このおもちゃは二人のために作ったものだろう?、別のもあるし、どうして一緒に遊べないんだ?」

「だって……。」


エアリーが不満げに呟く。


「僕だってこれで遊びたいんだ!」


テロスも言い返す。

俺は一瞬考えた後、冗談っぽく木製の馬を二つに割る仕草をしてみせた。


「じゃあ、この馬を半分ずつに分けるか?」

「それは嫌だ!」


二人が同時に叫ぶ。


「じゃあ、一緒に遊ぶ時間を決める。エアリーが最初に遊んで、その後はテロス。それでどうだ?」


俺の提案に、二人は顔を見合わせた後、ようやく頷いた。


「それならいいよ。」

「うん、僕もそれでいい。」


二人が笑顔を取り戻し、仲良く遊び始めるのを見て、俺はほっと胸を撫で下ろした。

次の日、エアリーとテロスがキッチンにやってきた。


「父ちゃん、何か手伝う!」 「僕も!」


簡単なサンドイッチ作りを教えることにした。エアリーは綺麗に形を整えバランスよく具材をパンに挟む、テロスは好きな具材を沢山パンに挟むのに夢中だった。


「できた!」


テロスが得意げに見せてくるパンは、好物のフッシュフライを好きなだけ挟められていて歪だった、それがまた愛おしかった。


「いいじゃないか。」


俺が褒めると、テロスは嬉しそうに笑った。

一方で、エアリーは綺麗な形のサンドイッチができている。


「父ちゃん、これ上手にできてる?」

「ああ、上手だ。」


出来上がったサンドイッチを三人で食べるとき、二人は満足そうな顔で頬張りながら


「父ちゃんより美味しいね!」


と笑った。その無邪気な笑顔が俺の胸を温かくした。

こうして、俺たち三人の新しい生活は少しずつ形になっていった。毎日が大変で、時にはくたびれることもある。だが、エアリーとテロスの成長を見守りながら過ごす時間は、何にも代えがたい宝物だった。

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2025年1月11日 12:00
2025年1月12日 12:00
2025年1月14日 12:00

繋がる未来のその先に シンナ @neo1rou

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