ミーハーについて

ヤマシタ アキヒロ

ミーハーについて

「ミーハー」と「好き」はどう違うのであろうか。

 そんなどうでもいいことについて、布団の中で考えてみた。寒い冬の朝の雑感である。


「好き」には内に秘めた静かな思いがある。下手に扱って壊したくない慎重さ、少しずつ大切に育てていきたいいつくしみがある。


 対して「ミーハー」には、開けっ広げな外向性がある。転んでもすぐに立ち上がる活力、バカにされても平気な開き直りがある。


「ミーハー」は言うまでもなく、流行に左右されやすい「ミーちゃんハーちゃん」の略であり、軽薄で単純な嗜好を指す。


 しかし、軽薄とは言っても、ふだん生真面目とされる人にその傾向があると、かえって親しみを覚えたりする。


 二宮金次郎が○○が好きだった、とか、ベートーベンは△△の愛好者であった、とかいう話を聞くと、とたんに彼らが身近に感じる。


「ミーハー」のいいところは、第一にその「取っ付きやすさ」にある。取っ付きやすいこと、お菓子の如しである。主食のような義務感がないので、やりっ放しの気楽さがある。


 第二に「ミーハー」にはお祭り感がある。思い切りのよい明るさがある。一夜かぎりの夢であることをうすうす感じているので、かえって今を遠慮なく楽しめる。


 第三に「ミーハー」は人と共有しやすい。「好き」が、自分だけで温めていたいのに対し、「ミーハー」は同好者が多ければ多いほど楽しい。公共性に守られて、屈折した自我を解放する喜びがある。

 

 どんな人にも弱点はあるが、「ミーハー」はそれをカミングアウトさせるチャンスを与えてくれる。言い換えるなら、虚像に対して自分の恥部をさらけ出す快感を提供してくれる。


 結局のところ「ミーハー」は、万人にとっての「必要悪」と言うべきか。あるいはアクを出し切るための「必要」と呼んでいいかもしれない。


「ミーちゃんハーちゃん」も、なかなか捨てたものではない。

 なーんて。

 あーあ、下らない妄想はこれくらいにして、そろそろ布団から出なければ……。


                             (了)

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