第2話 取り調べ

「おい! 時間だ。出ろ」


看守はそう言って寝ている俺を叩き起してきた。

久しぶりにグッスリ眠れていたのにこの仕打ちは酷くないか。


「なんですか?」


「さあな。処刑じゃないといいな」


そう言って看守はニタニタと笑う。

なんて性格の悪いやつなんだ。


現在俺は牢獄にぶち込まれている

あと後「やった」、「やってない」と口論した末、俺の意見は無視されて逮捕された。

「この誘拐犯!」とか「死ね罪人!」とか言ってきていたが逆だ。

俺は王女様の命の恩人だぞ。


当の王女様は気絶したまま目を覚まさないし本当に滅茶苦茶だ。

このままじゃ俺は本当に処刑されてしまうかもしれない。


「ここに入れ」


そう言って看守は部屋の鍵を開ける。

中は暗く嫌な空気がしている。


部屋の中に入ると強い力で押さえつけられた。

手足を拘束され壁に張り付けにされる。


「お前が王女殿下を誘拐した罪人か。

俺の取り調べは厳しいぞ」


そう言っていきなり棍棒で殴ってくる。


「クッ……」


これじゃ取り調べとは名ばかりの拷問だ。

俺はストレス発散の道具じゃない。


暗い部屋の中目をすますと相手が豪華な服を着ているのが見えた。

この拷問は貴族の道楽ということだろうか。


「ぐあああ!!」


さらに二発殴られた。


「どうだ?口を割る気になったか?」


そう言って拷問野郎は俺の髪を掴み顔を近づけてくる。


「ぐあぁああああ!!!!!」


部屋に響いた大きな悲鳴は俺のものじゃない。

俺が拷問野郎の鼻に思いっきり噛み付いたことで起こったものだ。


「殺す!」


俺が無言で睨みつけると看守の目は血走り完全にプッツンしていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◇


「取り調べは終わりです」


どれほどの時間が経ったのだろうか?

誰かがこの部屋に入ってきた。

よく目をすますと誰か分かった。

こいつは俺を捕まえたやつだ。


「そうか。もうすぐで犯行を認めされられたんだがな」


「ですがこれは殺す気の拷問ではないですか。

とにかく取り調べは終わりです。

王女殿下による証言が出ました」


「ならそちらに引き渡す。何分俺も忙しいものでな」


ようやく取り調べが終わった。

もう何発殴られたか覚えていない。

指とかもおられているだろう。


まったく子供によくこんな残酷なことができるな。

貴族っていうのは恐ろしい奴らばかりだ。


「少年聞こえるか? おい」


「う、ああ」


何とか声を絞りだし返答する。

手枷足枷を外してもらい久方ぶりの地面と足でハイタッチした。


「よく生きていたな。お前を拷問したザクズ卿は取り調べ相手をことごとく殺している方だ」


そんな奴に取り調べをさせんな。

おかげで今の俺の状況は深刻だ。

もう歩く余裕も残っていない。


「大丈夫か?」


今の俺が元気に歩き出したらみんなビックリすること間違いなしだ。

もし大丈夫に見えるならそいつの目は腐っているだろう。

そもそも今俺がこんなことになっているのは王女から目を離して迷子にさせた奴や俺の話を聞かず逮捕した奴のせいだ。


とりあえず怪我が治るまでゆっくり休みたい。


◆◇◆◇◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇◆◆◇◆◇


「して例の少年のこれからの処遇についてだが各々の意見を聞きたい。

そなたらはどう考える?」


広い議場によく通る声の持ち主。

それはこの国、ガーデンハウル王国の王その人である。


「王女殿下救出に騎士団が何もできず、スラム街の浮浪児に助けられたことが広まれば騎士団の信用問題に関わります。

その生涯監禁、もしくは一思いに殺してしまうのも選択肢のひとつであると考えております」


「スラム街の浮浪児が何か言ったところで何の影響もありますまい。

早く解放するべきです」


会議に出席する貴族の意見は各々違うようだ。


「そもそもまだ少年の疑惑が晴れた訳では無いのでは?

これから更に取り調べを重ねれば何か見えてくるかもしれない」


「それがもう既に拷問までしたそうだぞ。少年の疑惑が晴れたのはほぼ確定だろう」


「もうよい。皆一度口を閉じろ」


様々な情報で混乱した議会を国王は一瞬で静めた。


「アロス。何かいい案はあるか?」


国王は最も信頼を置く側近に意見を求めた。


「そうですな……。疑いは晴れたとはいえスラムの人間。念のため殺しておいた方が良いでしょう」


「そうか……。王として時に冷徹な判断をせねばならないことは分かっている。

しかし世は娘を救ってもらった身だ。

何の礼もせず殺すというのは少々気が引ける」


「ではこういうのはどうでしょうか?

報酬として王都騎士学園の受験資格を与えるというのは。

本来貴族にしか与えられることのない受験資格は十分に褒美になるでしょう。

無事受かれば手元に置いて管理すればいいですし、もし落ちてしまったらその時は殺せばいいのです。

陛下としては褒美を渡した時点で十分少年に報いています。

騎士学園を落ちてしまうことは彼の責任です」


「おおそれがいい。そうしよう」


王のその言葉に今後の方針は決まった。

しかしここにいる誰もが理解していた。

スラムの少年が騎士学園に受かるはずがないことを。

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冤罪で捕まった俺が成り上がるまで ダチョ太郎 @okitadx

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