冤罪で捕まった俺が成り上がるまで
ダチョ太郎
第1話 冤罪
「あの、道案内をお願いできますか?案内役の者とはぐれてしまって」
育ちが良さそうな喋り方に高そうな服。
年齢は俺と同じくらいか?
いずれにせよここスラム街にはふさわしくない身分であることは確かだ。
「無理だです」
そんな豪華な服でこんな所を歩いていれば人さらいに攫われる可能性は大だ。
しかしこういう身分の高い人と俺みたいな貧しい人間が関わるとろくなことがない。
可哀想だけどほうっておくのが一番だ。
「お願いします」
なおもついてくる。
そこら辺にいる他の奴らを頼ればいいだろと思うがここにいる奴らはみんな怖い顔をしている。
最初に話しかけたのが俺じゃなきゃ一瞬で身ぐるみを剥がれていただろう。
「小僧。その子、お前の連れか?」
俺の目の前には片目に黒い眼帯をした超強面のデカイおっさんが立っている。
「違います。知らない人です」
そう言って俺の背中の後ろに隠れている子から離れる。
狙いは俺じゃないみたいだ。
こんな奴に目をつけられれば狭い貧民街の中では生きていけない。
「きゃあ!」
男が女の子の手を掴んだ。
俺がすることは見て見ぬふりだけだ。
それ以外はする必要はない。
大体俺みたいな浮浪児が生まれるのもこういう貴族とかの上流階級のせいだ。
ささやかな復讐と思え。
『助けて』というふうに女の子が俺の方を見る。
やめろ。
そんな顔をしても俺には何もしない。
そんな俺の思いを体は速攻で裏切った。
体は動き出して少女の手を掴む。
「その子を離せ」
俺の言葉に眼帯は振り返った。
「関係ないんじゃなかったのか?」
「気が変わったんだ」
結局見てられなくなるとは。
俺もお人好しだ。
「なら死ね」
そう言うと眼帯は俺に向かって拳を突き出してくる。
治安の悪い貧民街で生きてきた俺は当然喧嘩ぐらいしたことがある。
しかし眼帯のパンチは今まで喰らったどんなものよりも重く鋭かった。
パンチは顔面に突き刺さり俺は鼻血を出して吹っ飛んだ。
「関係ないなら死なずに済んだものお」
勝手に殺されたことになっている。
でもこのまま死んだふりしてれば見逃してくれるかな?
そう思ったが一発殴られたことで俺はもうスイッチが入ってしまっている。
一発もやり返さないまま終わるなんてことは許せない。
瓦礫から飛び出しその破片を投げる。
思わず目をつぶる眼帯。
隙だらけだ。
「おらッ!」
俺の攻撃と共に眼帯が悶絶する。
もちろんパンチしたのは股間だ。
ここが一番ダメージを与えられる。
現在にも未来にも。
「お、覚えてろよ!」
ありきたりな捨て台詞を吐いて眼帯は逃げて行った。
俺の勝ちだ。
少女は恐怖のあまり気絶していたようだ。
助けた手前このまま置いていく訳にもいかない。
どうしようかと迷っていると腕を掴まれた。
腕を掴んできた女性も豪華な服を着ている。
もしかしてこの人も俺に道案内を頼みたいのか?
今日は運が悪い。
めんどくさい人に絡まれてばっかだ。
「王女殿下から手を離せ」
「いてっ」
ものすごい握力で握られた俺の腕は赤くなっている。
「何するんだよ」
腕を振り払い距離をとる。
初対面の人に危害を加えるやつに近づきたくない。
「お前王女殿下に何をした?」
この子王女様だったんだ。
なんでそんな人が一人でこんな所を歩いてたのかな?
「何もしてねぇよ」
むしろ俺は王女様を助けた側だ。
「話にならないな」
そう言って剣を突きつけてくる。
この人すぐに手が出るタイプの人だ。
試しに怖がっているふりをしてみる。
しかし殺気が弱まることはなかった。
だめだこの人子供にも容赦のないタイプだ。
「見つけた!」
またまた豪華な服を着た人達がやって来た。
おそらくこの人たちも王女捜索隊みたいな感じなんだろう。
どうにか誤解を解いてくれ。
「こいつが誘拐犯か」
勘弁してくれ。
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