もう帰ループ
バンブー@カクヨムコン10応援
何気ない一言が世界の分岐を生む
「タクヤなんてもういい! 帰る!」
彼女のサヤが怒って外へ出ていった。
俺と喧嘩して原因は対した事ではない。
焼き鳥は塩とタレ、どっちが美味しいかで言い争いになり喧嘩してしまった。
「普通に考えてタレだろ……」
塩が好きと言っていたサヤ。
なにもかかっていない焼き鳥よりもタレがかかってた方がお得に決まってるだろ。
「甘いぞお前」
「うわ!?」
押し入れのドアが勝手に開くとボサボサ髪のおっさんをが出てきた。
「な、なんだよお前!? どっかから、入ってきたんだよ!」
「俺は20年後のお前だ」
「は!?」
「未来から来たんだよ」
そう言うとボロボロの手から先端にスイッチの付いたカラフルな卵を差し向けて来た。
「これはタイムマシンだ。これで数分前に戻ってサヤに、俺も塩好きだよって言え」
「な、なんでだよ!」
「俺はこの後サヤとは別れる。彼女も作れず、結婚も出来ないままアラフォーの道へ進む」
おっさんは真剣な表情で睨む。
「仕事も上手くいかず、ホームレス生活を送るんだよ……運よくタイムマシンは開発されて俺は店のタイムマシンを盗んでここまで来た! 頼む、嘘だと思ってボタンを押してくれ! 数分前に戻って未来を変えるんだ! 頼む!」
「わ、わかった! 押す、押すだけだからな!」
切羽つまった様子のおっさんの圧に負けボタンを押した。
★〜★〜★
「タクヤ〜、焼き鳥はタレと塩、どっちが良い?」
「……え?」
俺の腕の中に甘えるサヤがいた。
これは……戻った?
本当にあのおっさんは未来の自分で、タイムマシンで数分前に戻ったのか?
「ねぇ〜タクヤはどっちなの〜?」
さっき怒っていたサヤではなくなっているサヤ。
よし、おっさん。
未来を変えてやるぞ。
「タレも好きなんだけど……最近塩にハマってるんだよね」
「本当!! やったあ、私とオソロだね!」
なんとか回避出来た。
やったぞおっさん。
ホームレス生活から抜け出してくれよ。
「それじゃ、焼き鳥の種類では何が好きなの〜?」
「つくね」
「はぁ!? なんでよ!? そんな子供っぽいやつあり得ないんだけど!」
憤慨するサヤ。
「タクヤなんてもういい! 帰る!」
サヤがまた怒って出ていってしまった。
なんでそんなに怒るんだ。
「つくね……絶対上手いよな」
納得いかないいるその時だった。
「タクヤぁ……久しぶり……」
「うわッ!?」
押し入れから、今度は太ったボロボロのおばさんが出てきた。
「私サヤだよ……20年後の」
「う、ウソだろ?」
「本当だよ……タクヤがつくねって言った事……本当はぼんじりって言ってほしくて……でも素直に言えなくて、そのまま別れて……その後も人生上手くいかなくて……気づけば独身ニートで人生台無しになっちゃった」
そう言ううと、サヤと自称するおばさんがまた卵型のタイムマシンを差し向けて来た。
「これを押して数分前に戻って……私にぼんじり好きって言って……」
「えぇ……」
「お願い! 私の人生がかかってるの! 今でも愛してるよタクヤ! 私の心は貴方のもの!」
ボロボロのおばさんに上目遣いされ、一応サヤの面影が見えたので承諾しボタンを押した。
★〜★〜★
「それじゃ、焼き鳥の種類では何が好きなの〜?」
おばさんは消え、腕の中で甘えるサヤがいた。
「ねぇタクヤー? ぼーっとしてどうしたの?」
「……ぼんじり」
「え?」
「ぼんじり食べたい」
言われた通りぼんじりを呟くと、
「きゃー! 私もぼんじり好きー! 私とタクヤは相思相愛だね!♡」
「ああ、そうだな」
上手くいったみたいだ。
これできっと最悪な未来を回避出来た。
めでたしめでたし。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
しばらくして、サヤがトイレに行ったその時だった。
「おい動くな」
「うわ!!」
押し入れから光線銃を持った少年が現れた。
「な、なんだ!?」
「僕は15年後から来たお前達の息子だ」
この少年は俺の息子を自称する。
「良いかよく聞け、ここでお前が母さんの趣向を変えないと妹が……娘が死ぬことになるんだ」
「……なんでだよ?」
「未来の世界では、身体を清める塩を崇拝する塩狂い教という大規模カルト宗教が広まるんだ。母さんは塩が好きだからどっぷりハマって宗教にハマった」
少年は涙を浮かべながら続ける。
「塩漬けにすれば魂を浄化できると洗脳された母さんは、幼い妹と塩漬けにして殺そうとしてくる」
少年は俺に銃を突きつけながら卵型のタイムマシンを取り出した。
「これで数分前に戻って、塩も良いけどタレも美味しいよって言え!」
「なんでだよ! 今言うよ! もういいって! 帰ってくれ!」
完
もう帰ループ バンブー@カクヨムコン10応援 @bamboo
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