ローマ帝国が分裂し、覇権を争う壮大な戦記が幕を開けます。史実に基づきながらも、戦術や駆け引きに緻密な描写が加えられた本作は、単なる歴史小説にとどまらず、英雄たちの生きた姿を浮き彫りにしています。
主人公のアウレリアヌスは、冷徹な判断と卓越した軍略を持つ皇帝。彼の前に立ちはだかるのは、東のゼノビア、西のウィクトリアという二人の女帝です。ゼノビアの騎兵戦術、ウィクトリアの巧妙な政治力、それぞれの戦い方が対照的に描かれ、アウレリアヌスとの衝突がより一層際立ちます。
戦場の描写は圧巻で、伏兵を用いた戦術やカタフラクト隊との攻防など、細かな軍略まで緻密に再現されています。戦闘だけでなく、ローマ元老院の陰謀や、各地の反乱も絡み合い、ただの武力だけではなく知略が試される展開が魅力的です。
文体は重厚でありながらテンポが良く、戦場の緊迫感や英雄たちの心理が伝わってきます。英雄たちの誇りがぶつかり合い、歴史の奔流の中で翻弄される彼らの姿が、まるで壮大な叙事詩のように胸に刻まれる物語です。
■あらすじ
時は紀元3世紀。
ユーラシア大陸の東に存在した漢帝国。対して西にはローマが存在していた。
やがて国力が衰えた漢は滅び、時代は魏・蜀・呉の三国が鼎立し、数多の武将達が活躍する三国時代へ。その様相は、正史たる『三国志』のみならず、『三国演義』としても語られる。
一方、時をほぼ同じくして、大陸の西側に位置するローマにも『三国時代』が存在した。
これは、かつてのローマの栄光を取り戻そうと戦場を駆け抜けたある皇帝と、
二人の女帝たちが織りなす、もう一つの“三国志”である。
■おすすめポイント
(1)目の付け所の面白さ
歴史とは、出来事をいかに語るか。
あるいはどのような価値や意味づけをするか。
そこに、語り手の歴史観や、センスが現れると思います。
軍人皇帝が現れては消えていく時代を「西の三国志」と捕らえた眼の付け所。
そして、二人の女帝達を取り上げた点。
非常に興味深く拝見しました。
(2)歴史小説としての面白さ
歴史小説。読むのは大好きなのです。
しかし、いざ書こうと思うと、……なかなか難しい。
ただの記録や解説ではなく、そこには血の通った人間のドラマが欲しい。
それこそが歴史を小説として読む面白さになる筈。
本作品は、まさしくそんな作品です!
日本人には少し馴染みの薄いローマ。
私も、西洋史はとんと疎いのですが、
読み手の手近へと引き寄せ、時代の空気、におい、人々の息づかいまでを硬派かつ格調高い筆致で感じさせてくれます!! おすすめです。