リーデンの里帰り

神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)

第1話

 十二歳の春、大賢者リーデン・グランフィールが亡くなった。

 リーデン様は、捨て子の私を育ててくれた。そして、彼は私の夫でもある。百歳離れた旦那さま。

 もちろん、私は子供なので、本当には結婚できなかった。それまで、十六歳になったら、本物の夫婦になれると信じていた。

「なのに、リーデン様ったら、四年も前に死んでしまったのよ! 解る、この無念が!」

「すまない、アステロッテ」

 王城の中庭、膝の上に座る小さな男の子。こちらを見上げる。今ではすっかり見慣れたプラチナシルバーの髪の毛と紫色の瞳。

「これでも、最短で君に会えるよう努力したんだよ」

「もお~!」

 私は、リンデルの頭をくしゃくしゃにしてやった。

「私、あなたより十二歳上なのよ! また待つの? もう四年経ったよ。リンデルが大人になるの待ってたら、私、おばさんになっちゃうよ!」

 リンデルは立ち上がり、私をぎゅっとした。

「あと六年。十歳になったら、結婚して下さい」

 リンデルの脇に手を挟み、持ち上げる。

「本当に?」

「本当に」

 ちびっこならざる色気ムンムンの笑み。そっと置く。頭をなでられる。昔と同じ。

「二十二歳のアステロッテ。楽しみだな。ドレス姿」

 熱くなった頬を両手で包む。

「……。ませたお子様ね!」

 リンデルはいつまでも笑っていた。




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リーデンの里帰り 神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ) @kamiwosakamariho

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