第一章

第3話

朱殷は困惑していた。



いつも昼間におやつを食べながら見ているワイドショー番組に、見知った男が、その褐色の顔に完璧な笑顔を貼り付け、有名タレントやアイドルに混ざって80インチのテレビ画面に写ったいたからだ。



「!?なんでぇ!?」



朱殷はそれまで、むちゃむちゃと咀嚼していたイカゲソを口から思わず吐き出してしまうほど驚き、声を上げた。



「おい、汚いぞ」



「あ、すいません…」



するとすぐ隣に座ってノートパソコンをいじっていた牡丹にジロリと横目で見られ、朱殷は慌てて自分が吐き出したイカゲソを拾って口に入れ直す。



そして隣で平然としている牡丹を確かめるように眺めた後、もう一度テレビに目をやる。



(いるな…)



朱殷はどうしても信じられず、短い前足で縫い付けられた漆黒の目を擦る。



が、何度見直しても画面には相変わらず完璧な笑顔を浮かべた恋が写っている。



「むむむむむぅ〜???」



朱殷が表情筋のないはずの額にシワを寄せ、ぶにゅりと一頭身の首を傾げていると、隣にいた牡丹がノートパソコンを閉じ、「そうか、お前は知らないのか」と面倒くさそうにため息をついた。



「?なにをですか?」



「任務だよ、吸血鬼の"最高傑作"を始末する任務」



そう言って朱殷を上から見下ろす牡丹のサンストーンの瞳は、どこか空虚な気がした。

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2025年1月10日 05:00
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目覚めたらぬいぐるみになっていました。② 椿 @Tubaki_0902

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