第2話 集結する美少女四天王・イケメン四天王と、動き出す石神 玲人。

「それにしても石神のやつ、あんなバカなことするとはな」


「どうせ四天王に選ばれるまで女子との関りもないような陰キャだったんだろうからな、ちょっと女子たちからチヤホヤされて勘違いしちゃったんじゃねw」


「ひゃはは! いるよな~、そういうヤツ」


 イケメン四天王である猿ヶ島 高治、毒谷 雄大、大熊 忠広の3人がくだらない会話ではしゃいでいる。


 さらには新たにイケメン四天王に加わったという1年生の円藤 春馬と、美少女四天王の1年生である姫野ひめの 瀬里佳せりかも彼らをおだてるように相槌をうっている。


 姫野はいかにもあざとそうなギャルって感じの女子だ。赤い髪をツインテールにしており、スカートは校則を違反するレベルで短い。顔もいかにも男性受けしそうな美人って感じだ。


 それはそうと……。


 ほんと、ばっかじゃないの? こいつら、ほんとくだらない。


 わたし――五十嵐 紗奈は黙ってこのくだらない連中を睨みつける。いつもだったら衝動的に突っかかっているところだ。


 ただ、今黙っているのは、あいつが……石神の言葉が頭に残っていたから。


 わかってるわよ……。わたしが余計な事なんかしなくたって、あんたは大丈夫だってことくらい……。


 と、わたしが睨みつけていたことに気が付いたのか、猿ヶ島が咳ばらいをして取り繕うように言う。


「まぁ、そんなわけで石神の代わりにここにいる1年の円藤 春馬がイケメン四天王の新メンバーとなった。どうだ、彼の歓迎会ってことで次の日曜、イケメン四天王と美少女四天王合同の会食でも開くのはさ」


「は~い、アタシさんせ~♡」


 姫野が猿ヶ島をおだてるように彼の腕にくっついて甘い声をだす。それだけで彼は鼻の下を伸ばしまくりだ。


 男性陣も全員猿ヶ島の発言に賛成の意を示す。


「あら、いいんじゃな~い?」


 さらに美少女四天王のうちの1人、3年生の道明寺どうみょうじ 香苗かなえが言う。


 スラっとしたスレンダーな体でありながら、男が好きであろう部位は豊満な美人。ウェーブがかかった明るい茶髪のロングヘア。いつも黒のニーハイソックスを身につけている。


 正直、この人が1番何を考えているのかわからない。いつもニコニコと微笑んで、いつも開いてるのか閉じてるのかよくわからない細い瞳をしている。


 石神が糸目……? とか言ってたっけ。とにかくそんな感じの目でいつも微笑んでるが、その裏では何を考えているのかわからないだけに、こういうタイプが一番こわい……とわたしは本能的に思う。


 そしてふいに美少女四天王の最後のひとり――これまで無言を貫いていた千堂院ちどういん 真琴まことが立ち上がる。


「今日の会議の本題はそれか? なら、私も参加ということで構わない。他に用がないならこれで失礼する」


 千堂院先輩が発言するだけで室内は一瞬にして静まり返る。彼女が出て行くと、体格のいい大熊がヒューっと口を鳴らして言う。


「生徒会長様は相変わらずクールだぜ」


 彼の言う通り、千堂院 真琴はこの嵐島高校の生徒会長である3年生だ。


 腰のあたりまで伸びる、紺色のストレートロングの髪。知的な印象を与えるつり上がり気味の瞳。スラっとしたモデルのような体型。スカートから伸びるスラっとした脚には、いつも黒タイツを身につけている。 


「で、紗奈ちゃんはどうすんの?」


 猿ヶ島がわたしに問いかけてくる。そう言えば、四天王合同の会食とやらに対する賛否を発言していないのはわたしだけだ。


「わたしは……」


 普段だったらためらいなく断っているところだ。どうせこいつらは女性陣に対する下心しかない。歓迎会とか言うのは明らかな口実だろう。


 けど、今回は……。


「いいわ、参加する」


 そう答えると、男性陣は沸き立った。




 もちろん、こんなくだらない下心丸出しの歓迎会なんてものに惹かれたわけでは一切ない。


 チャンスだと思ったのだ。もしかしたら、石神が追放された件に関する情報を引き出せるかもしれない。


 ごめんね、あんたはわたしのアシストなんて、余計なお世話だって思うかもしれない。


 けど、やっぱりわたしはこいつらを許せないの……だから、わたしはわたしのやり方で絶対にあんたの無実を証明して見せる――



















 ――とか、五十嵐は思ってるんだろうな……。


 誰もいない校舎裏で、俺はイヤフォンからリアルタイムで流れる四天王会議の会話を聞いてそんなことを考える。


 やがて音声が途切れる、四天王の集まりも解散となったのだろう。


 それから少しして、チャットアプリにメッセージが届く。


<どう、これでいい?>


 このチャットアプリはきっと誰もが使っている緑色のアイコンのアプリではなく、主にネット上の集まりで使われることの多い別のものだ。


 こっちのアプリを使っているのは、もし何かあったときに俺との繋がりを疑われないためである。


<あぁ、完璧だ>


 俺――石神 玲人はノートパソコンを使ってそのチャットアプリから返信をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勝手に高校のイケメン四天王にされていた上に冤罪で四天王を追放された俺、陰で暗躍していたらなぜか美少女四天王だけじゃなく校内の美女たち全員から好かれてしまった件。 踊る標識 @odoru_hyousiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画