第3話 『頂上漫才PART3”漱石VS鷗外”』



 …お正月らしい出囃子とともに、文豪二人が相次いで現れる。

 漱石は「日本銀行公認」というのぼりを背負っている。観客爆笑。

 鷗外は「エリス命」というたすきを掛けている。またも観客爆笑。

 二人、照れ笑いしている。


 漱「謹賀新年! 21世紀、令和になっても令名轟き、”琴瑟相和す”がモットーの文豪・夏目です。おれも、偉くはなったけど、お札にまでなるとは意外だったなあ。

ペンネームからして、「石で口をゆすぐ」と、言い間違えをした人の故事から来ていて、半ばジョークなんだがね」


鷗「本名は森林太郎。石見の生まれの森です。おれも、軍医からどんどん出世して最高位まで上り詰めたけど、作風が渋いからもうひとつ大衆人気では君に劣るな~。ペンネームもカモメ橋という地名のことで、なんとなく派手さがないね。」


漱「おれは東大英文科で、留学したのもロンドン。霧のロンドン、は陰鬱で、ノイローゼになって、「発狂説」が流れたらしいんだ。ロンドンに行って「魯鈍ロドン」になっちゃダメだね。(笑い) パリに行ってロンパリになる?とか、ローマに行って聾唖ろうあになるとか? 放送禁止用語ばっかしやな(笑い) 昔の人間なもので(笑い)」


鷗「おれは、留学先がベルリンだ。 ルリルリ!(笑い) これはおニャン子クラブ会員番号18番の永田ルリ子のギャグ(笑い) 全然関係ないな(笑い) おれはすげーモテる男だから、エリスていう美貌の踊り子が帰国したおれを追っかけてきたんだぜ! こんなえんな逸話はドガやら川端康成にもないよなあ。どっちも「踊り子」で有名だけど。その顛末を書いた「舞姫」がまあ代表作だな。高校の教科書にも載ってるよ。」


漱「おれの場合は、ノイローゼとか胃弱で悩んでいたのが、小説の執筆でだいぶん良くなったんだよ。まあ小説書きが天職だったんだな。今の日本語の散文の基本的なスタイルを作ったのがおれと言われてるってね。 東大の英文科の教授もやってたしなあ。 有名なのは「I love you.」ていう、小説中の英文を「月が綺麗ですね」って意訳したっていうちょっと粋なエピソードね。 ゴミ箱を「護美箱」て当て字したり、ズタズタを「寸断寸断」、「ロマン」を「浪漫」とか、後年のシリアスな作品には遊び心とか蘊蓄はあんまりないけど、「吾輩は猫である」なんかはこういう雑学っぽい教養の宝庫だよね。明治の教養人の書斎界隈の雰囲気みたいなのがよく現れてるよな~」


鷗「ハナシ真面目になりすぎやな(笑い) 昔はまあ小説家はインテリゲンチャの代表格で、オピニオンリーダーというか、無知な大衆を導く役割で…今のような売らんかなの悪書やら、俗悪な文化とかは唾棄された。まあ、正常やったんや。だんだん堕落してきたんはやっぱり商業主義に毒されて、権力に媚びを売る白痴文化人とかが増えてきたような、アホみたいな昭和元禄とか、そういう白痴テレビのせいだろうね(笑い)汚穢おえ!(反吐を吐く)」


漱「わっつ!ここで吐くな!臭い臭い!(笑い) ニラレバ炒めでも食うたんちゃうか?(笑い)もう終わりや終わりや」


<幕>

  





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新春初笑い・『頂上漫才・”キリストVSブッダ”』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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