愛着信

到達者師失人

第1話

愛着信


ある日十年連れ添った夫が事故で死んだ。

 その事故はひき逃げでその犯人はその事で動揺して操作ミスをして対向車とぶつかり車は大破で死んでしまった。

 犯人は施設育ちで天涯孤独結婚もしておらず私は怒りをぶつける対象さえ失っなった。

 私も施設育ちで親戚も両親もおらず、夫が亡くなる前に急遽転勤が決まり今いる街で友達すらいない。

 夫の両親も子供さえない赤の他人同然となった私と距離を置き。

 私は文字通り一人になってしまった。

 私は考えたずっと考えたそして出した答えは自殺して夫の元に行く事。

 私は夫の趣味の釣りの糸で一番太い糸を天井の照明の金具に括り付け、首を吊ろうとした。

 首を吊ろうと椅子にのり糸を手にし涙が流れ落ち夫との幸せな思い出が脳裏に蘇る。


 「貴方今行くわね」


 そう呟き首を吊ろうとすると、スマホの着信が鳴った。

 私は咄嗟に椅子から飛び降りスマホを拾い上げた。


 「やっぱりあの人からメール着信」


 そこに表示された名前は夫でその着信音の設定は夫だけだ。

 そしてそのメールには五桁の数字が記されている。

 私ははっとしてリビングの夫の形身の小さな金庫を拾い上げその番号にダイヤルを合わせた。

 そこには一枚の折りたたまれた紙がある。


 『僕が生前言っていたように、ここに君への言葉を残す。君は優しく素直で苦労していたようだけど僕はそんな君が大好きだ。まだ子供はできないけどできたならきっと君みたいな優しく魅力的になると思う。これは僕が死んでしまった時、君のために残す僕の愛の気持ちだ。もしかしたら再三残すといったこの金庫の暗証番号をしらせぬまま死んでしまったら、僕はこちらから君にメッセージを送る。これができたら君が僕がいなくなり落ち込んでいたらこれが僕が死んでも君を愛している証にしてほしい。君が大好きな一人の夫より』


 「貴方ここまで私を」


 すると私のお腹の真ん中がトクンと脈打ち手を繋いで歩く親子の姿が見え大粒の涙が零れ落ちた。


 「貴方ありがとう」

 

 ◇

 「という事があったのよ」


 「またその話? 心配しなくて大丈夫よ。ここまで母さんを愛している父さんと母さんに愛され生まれた私が幸せにならないわけないもの、明日の結婚式について彼と打合せするね。明日の結婚式楽しみにしていてね。きっと父さんも見守ってくれているわ」


 「そうね」


 そういった時私の肩に手が乗せられた気がした。

 私は感触のないその手を握り。


 「そうね明日一緒に私たちの娘の門出を見守りましょう貴方」

 

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愛着信 到達者師失人 @siusiboto

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