帰ってきたあと
全てが終わって
15のイレギュラー。彼は何年も漂流しました。世界の父母が作った残りの三人のイレギュラーはすでに死んでいました。寿命、でしょう。当然です。
彼は一人で過去の人類の遺物を見つけようとしました。
そして、それを持ち帰りました。
彼が集落を出てから15年後。帰ってきたのです。望郷の地に。
ですが、たくさんいたオリジナルたちも、クローンたちも、工場も、何もかもが荒廃していました。
彼らは絶滅したのでしょうか。
ならばなぜ、彼はここまで探索を続けたのでしょうか。辛い境遇を乗り越えてなお、未来のために生きようとしました。
違います。
彼らは絶滅してなどいませんでした。どこからか声が聞こえます。彼はその声の方向に歩いていきました。昔の広場だった場所です。
そこには多用多種なものたちがいました。
昔のように同じ顔のものばかりではありません。色々な顔と髪色と目の色の生物が戯れています。
彼は迷わずその輪の中に入っていきました。色々な色が入り乱れ、一つの大きな輪を形成しています。その中に白色がひとつ、加わりました。
とてもその輪は綺麗です。彼はこの綺麗な未来を予知していたから、生きました。娘を慈しみながらも、その死に際を見届けない選択をしました。未来のために。
未来の幸せ。今の小さな幸せ。
未来の幸せが実現しないかもしれないなら、迷わず今の小さな幸せを彼はとったでしょう。しかし未来が見えた彼は、今の幸せより未来を選びました。確定した未来が、彼の判断を狂わせます。
その無情な選択は人の異種がとった選択です。
これを疎むものはいるかもしれません。しかしそれが進化です。異種です。自らと似ていて、それでも違う、何かです。
▲
広場に生き残っていた人たちは、色々な集落から集まった人たちや、その子供でした。
過去、クローンに全てを任せた人間たちは新たな疫病と隕石衝突というイレギュラーに対応できず、大半が死に追いやられます。生き残った物たちも地上では生きられなくなりました。
地下に生活圏を作り、その過酷な環境を耐えました。そのうちのいくつかの集落、世界の母たちが作ったような集落ではクローンを地上に送り込み、情報を得るという可能性が模索されていたのです。
そのまま、何も起きずに何百年、何千年もの時が流れました。何一つ進展しない中、一つの集落が地下での生活圏を広げます。すると、地下にあった他の集落を見つけ、また他の集落を見つけいつしか大きな町となりました。
世界の母たちの集落も、それに吸収されたうちの一つです。オリジナルのいなくなってしまった集落に、その街は落胆しましたがそれでもクローンたちを受け入れました。彼らは狭苦しい家ではなく、街の方に移り住んだようです。
彼は、その未来を見て、来たるその日に人類が地上へ上がれるように努力したのです。彼は多くの知識を持ち帰り、技術を持ち帰りました。
そして、残った人々は今地上に上がることができています。長い時をかけて薄められた放射線や病原体。そして持ち帰った技術による高水準の建築群や食糧生産設備。
青い空の元、彼らは変異種をいくつも生み出しました。異能を持つものをたくさん生み出し、発展しました。
だけれどその景色を、三人は見れていません。
過去に犠牲になった1523。いや父が授けた名前で呼ぶのなら、
そして、世界の父母。アルスとマリン。
犠牲になった彼らは、もういません。
<終>
あとがき
旅の部分全部すっぽかしました。なんか異世界ファンタジーっぽくなりそうだったので。あと捻りが思いつかなくて...
最後まで読んでいただきありがとうございました。なんか色々疑問が残ってるかもしれません。最後の設定説明のところで説明しきれなかったところがあるかも。
もし、知りたいこととか誤字脱字的な指摘点がありましたら何なりとお伝えください。
遥か未来で ぼっちマック競技勢 KKG所属 @bocchimakkukyougizei
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