第21話 揺れる矛先
アークレイン機械戦術学院の訓練場。朝の冷たい空気が張り詰め、生徒たちは特別訓練の開始を待ち構えていた。教官ライオネルが訓練場の中心に立ち、厳しい視線を全員に向けた。
「今日の訓練は、実践に近い特殊訓練を行う。特にアンブレラの正確な操作と判断力を磨くのが目的だ。」
ライオネルの言葉に、生徒たちは気を引き締めた。
「全員、装備を確認しろ。訓練内容については、現場で説明する。」
アレンたちはアンブレラを手に取り、それぞれの持ち場についた。
訓練場には、複数の模擬ターゲットが設置されていた。それは人型の標的で、敵対的な動きをするようにプログラムされている。ライオネルの合図でターゲットが動き始めた。
「ターゲットを制圧しろ。ただし、過剰な力は不要だ。要点は『制圧』だ。」
生徒たちは指示に従い、アンブレラを使ってターゲットを攻撃し始めた。だが、そのターゲットの動きや攻撃方法が、どこか見覚えのあるものだと気づく。
「このヴォイド変な動きだぞ?」
ユアンが訝しげに呟く。
「確かに、動きが妙に人間っぽい…。」
ナイラが眉をひそめる。
アレンもターゲットを見つめ、言い知れぬ違和感を覚えていた。その一方で、ターゲットの動きは生徒たちを追い詰めるような巧妙なものだった。
「おい、このターゲット…俺たちの動きを読んでくるぞ!」
セドリックが声を上げた。
訓練が進むにつれ、生徒たちはターゲットの動きがただの模擬戦ではなく、明らかに人間を想定したものだと気づき始める。
「これって…もしかして、人間相手の訓練なのか?」
ユアンが困惑した表情で呟く。
「まさか…そんなのあり得ないよ。」
ナイラが声を震わせる。
しかし、模擬戦の内容がますます明確になるにつれ、生徒たちは動揺を隠せなくなっていく。訓練場の端でローラがアンブレラを握りしめながら叫ぶ。
「こんなのできない!私たちの目的はヴォイドを倒すことじゃないの?」
ライオネルが生徒たちの反応を見て、冷静に言葉を続ける。
「訓練の目的は状況に応じた正確な判断力を鍛えることだ。敵がヴォイドである必要はない。」
「でも、これは…人間を相手にしてるようにしか見えない。」
ローラが涙ながらに抗議する。
ライオネルは息をつき、生徒たちを見渡した。
「お前たちはこれから、戦場に立つ人間になる。ヴォイドだけを相手に戦えると思うな。戦場では、いつだって予想外のことが起きる。そして、時には…同じ人間を相手に戦うこともある。」
ライオネルの言葉が重く響く。
「敵はヴォイドだけではない。この戦いでは、精霊に加担する裏切り者が現れる可能性もある。彼らを見逃せば、次に命を奪われるのはお前たちだ。」
「それじゃあ…私たちが殺さなきゃいけないってことですか?」
ナイラが声を震わせながら問いかける。
ライオネルは静かに頷いた。
「そうだ。だが、ただ感情で動くな。冷静に判断しろ。そして、自分自身でその判断の重みを受け止めろ。」
訓練後、Cクラスの生徒たちは訓練場の隅で集まっていた。それぞれの表情には混乱と迷いが浮かんでいる。
「俺たちが…人間を相手に戦うなんて…。」
ユアンがつぶやく。
「これじゃあ、ヴォイドと戦う理由も分からなくなる。」
セイドリックが顔を伏せた。
「これが人間を守る戦いって言えるの?」
ローラが涙を流しながら言う。
「じゃあ、どうすればいいんだよ!」
アレンが突然叫ぶ。
「ヴォイドに殺されるのを待つだけか?裏切り者を見逃して、もっと多くの仲間を死なせるのか?」
その言葉に全員が黙り込む。だが、アレン自身も自分の言葉に確信を持てないままだった。
UMBRELLA もじょきんたん @cyairoikedama
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