小鳥達と畔
要想健夫
小鳥達と畔
※[この作品は、フィクションです、実在する人物、団体などとは、一切関係ありません、そして様々な発言も特定の人物、団体についての言及、中傷ではありません、それではご理解を上にお愉しみ下さい]
「これは、僕が今年最も印象に残っていた」
「或、山に登った出来事だ」
京都府の市の一つである、宇治市。
僕は、母と祖母と叔母とで、橘橋(たちばなばし)と朝霧橋(あさぎりばし)を渡り、稲荷山へと向かっていた。
本来、稲荷山は大吉山と呼ばれているのだが、今回はこの俗名で呼ばせて貰う事にする。
そんなこんなで僕を含めた一行は、宇治神社、宇治上神社の鳥居を潜り抜け、稲荷山の麓へと到着した。
微かな日光が差し込む中、祖母が山の麓に置いてある、杖を一つ取っていき、杖を軽く付いた、どうやらまだまだ元気だそうだ。
僕も軽く手足を捻る様な動作を行い、僕らは稲荷山へと登り始めた。
僕は、この稲荷山へは、何度か登った事があり、山道はまぁ、運動になる程度だ。
中でも、山道をランニングなどで走り抜く、底の知れぬ、人々が居るほどに。
だが僕は知っていた、これよりも数倍はキツイ山道を、それは、音羽観音寺(おとはかんのんでら)への、参道、基、山道だ。
観音寺の、山道は当に坂道の連続であり、足腰に来るものがある、そんな所だ。
そんな少し前に行った、観音寺の事を思い出していると、山道を僕達はドンドンと進んでいっていた。
道中の木々などには、度々、〇〇幼稚園だの〇〇小学校だの、卒園記念、卒業記念の、木や植物が植えられていた。
僕はそんな事を、雑学を言う様に、三人に伝えながら、脚を動かした。
山道は登るにつれて、落葉が散乱していたり、石が置いてあったりと、さっきの山らしからぬ、舗装された道から、移り変わっていた。
僕らは、少し苦戦を強いられながらも、足腰を動かし、山を何段か登っていった。
山は、登るにつれ、景色を高くしていき、さっきの山の麓なんかは、もう見えなくなっていた。
さっき、この山を何度か登った事があると、記したが、それは何れも、年始の時期に山を登っていた。
年始は、母の実家に帰省し、隙あらば山を登ろう、そんな物事でだ。
今回の山登りでは、叔母が居るのだが、それは、この山を共に登ると言う点ではとても、物珍しかった。
普段、叔母と会うのは、祖父母の家に帰った時ぐらいだったのだから。
だから、僕は京都の神社に出掛ける予定を、取り止め、こうして山を登っていた。
叔母が居る、稲荷山への登山は新鮮であった。
そうして、しばらく、山を登って行くと、僕達はとうとう、山の頂上までと到着した。
僕は、早足で、大吉山展望台から見える、その景色を見る為に、柵の近くに駆け寄った。
その、景色は宇治市を一望出来る程の、景色であり、快晴だった為、その景色はもっとも美しく見えた。
僕がそうして、展望台からの、景色を堪能していると、祖母が駆け寄って来て、ひまわりの種の小袋を手渡して来た。
僕は、それを受け取り、ようやく、この稲荷山での一つの楽しみを思い出した。
それは、この山を飛び回っている、オレンジ色の小鳥に餌をやる事だった。
僕は祖母に軽い礼をし、その時長かった爪を使って、小袋を開いた、それから僕は滔々と、自分の右手にひまわりの種を撒いた。
掌には、
これは何処かで、聞いた話なのだが、掌を伸ばし、ひまわりの種を撒くと、山の小鳥達は集まって来やすいらしい。
僕はその話を信じながら、釣りで魚が引き上がるまでの、待ち惚けに近い時間を待っていると、小鳥達が近くの枝に集まり、クリクリとしたその眼で、こちら側を覗き込んで来ていた。
僕は出来るだけ、静止する様に努めていると、鳥達の内の二羽が、掌に突っついて餌を頂く為に、鋭利な足を食い込ませながらやって来た。
その感覚は少し痛みを伴う、物だが自然と小鳥達に見惚れてしまうものだった。
小鳥達と目を合わせ、颯爽とひまわりの種が、奪い取られて行く。
それに、怒の念など、抱くのは、言語道断であった。
小鳥達は、次々とひまわりの種を奪い取っていき、その光景はとても微笑ましかった。
そして、可愛げに溢れているものであった。
僕がその光景に見惚れていると、ひまわりの種は最後の一つに成っていた。
僕は気付いた様にひまわりの種を覗き込み、最後の小鳥の動向を探った。
小鳥は警戒の念を見せながらも、首を何度か振った後、颯爽とひまわりの種を奪い取って行った。
そうして、小鳥はこの大吉山の木々に溶け込ませる様に姿を晦ました。
ひまわりの種を撒き終え、僕は満足気に、母、祖母、叔母と帰っていく山道にて、改めて、こう思った。
「今年は飛躍の年にしたいな………」
そんな今年の抱負を漏らして、僕と母と祖母は、叔母と別れ、一度、家に帰って行った。
小鳥達と畔 要想健夫 @YOUSOU_KERUO
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