バレリーナの様に、つま先をピンと伸ばして
リュウ
第1話 バレリーナの様に、つま先をピンと伸ばして
夜中の初詣を終えて、僕の部屋に帰ってきた。
君を連れて。
僕は、シャワーを浴びて、テレビのスイッチを入れた。
なぜ、この時期のテレビはこんなにくだらないのだろうと、
チャンネルを忙しく変えた。
見るのに耐えられそうな番組をかける。
ドライヤーの音が止まり、君がシャワーから戻ってきた。
冷蔵庫から、冷え冷えのカシスオレンジのチューハイ缶を持ってきて
蓋を開けてと僕に差し出す。
僕は、直ぐに蓋を開けて、君に渡した。
僕も、缶の蓋を開けて、飲んだ。
君は、テレビを見ながら、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲んでいる。
喉の動きに僕は引き付けられていた。
気づいた君が「なぁに?」と首をかしげる。
「なにも」
僕は、ベッドに横になった。
君は、ベッド横に滑り込むように僕とテレビの間に陣取った。
「ねぇ、今年もよろしくね」と、君が言う。
「ああ、よろしく」僕も答える。
「ずーっとこうしていたい」君は振り向いて僕の顔を見つめる。
「私、言いたいことがあるんだ」
君は僕の首に両手を回して、呟くように言った。
「私、ずーっと背伸びしていたの。
あなたに嫌われないようにって」
君は、僕の眼を見つめる。
「バレリーナの様に……
つま先をピンと伸ばして立っていたの」
少し泣いているようにも聞こえる。
「僕は、君が好き。
背伸びしようとするところが好き」
僕は、彼女のメガネをそっと外して、ベッドのサイドテーブルに置いた。
メガネをしない君は、とても可愛くて、
メガネの君は知的で、ツンとすましているところを壊したい欲求にかられる。
「背伸びをしないわたしは嫌い……どっちが好きなの」
「どっちも好き」
僕は、君の柔らかい唇にキッスした。
触れるか触れないかのギリギリのキッスを。
君の息遣いを耳にしながら、
君の細い肩甲骨に手を回して抱きしめる。
もうテレビの音は聞こえない。
僕の身体を柔らかい君の身体に押し付ける。
僕の想いが君の身体に入り込むようにと。
いつか、二人の息遣いが一緒になったら、
頭の中が空っぽになっていて、
僕は、君だけを感じる。
君が僕だけを感じるように、
「僕も背伸びをしているんだ」
バレリーナの様につま先をピンとして。
バレリーナの様に、つま先をピンと伸ばして リュウ @ryu_labo
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