第39話 俺の体はもつんだろうか
「〈糸〉ばあちゃん、また来るけど、もう帰るわ」
「ほぉ、もう帰るのかぁ。 今度は嫁子も連れて来いよぉ」
「分かった、そうするよ。 ここから町へ出るにはどうしたら良いの」
「はぁ、どうやって来たんだぁ。 バスはもうねえからなぁ。 ばあちゃんが使ってたバイクをやるよぉ。 もう乗ったらいけんとぉ、五月蠅いんじゃ」
「えっ、良いの。 ありがとう、〈糸〉ばあちゃん」
物置に置いてあったバイクは、スーパーカブだった、実用性に優れたリッター100キロを超えるモンスターである、〈糸〉ばあちゃんのチョイスに敬意を表して乾杯だ。
チョークを少し引き、メインスタンドを確認して、ギアはニュートラルに入れる。
キックペダルを軽く踏み込んで、抵抗の具合を確かめてみる、少し固くなったのは、〈ハッチ〉のちっぱいって感じだ、五回しよう。
キックペダルを本気で、一回、二回と蹴っても、エンジンがかかる気配はまるでない、〈アッコ〉が二回のキスでは、体を開いてくれないのと同じだ。
力み過ぎてキックを空振りすると、足にケッチンをくらってしまう、〈さっちん〉に抓られるより痛いんだ。
十回くらい繰り返すと、何となくエンジンがかかるような予感がしてきた、十二回目でパパラッパと、機嫌が悪そうだけど何とかかかってくれた。
浮気状態の俺が何度も謝った事を思い出して、涙が滲んでしまうよ、何とかなって本当に良かったと思う。
ハンドルのアクセルを少し吹かすと、ブルルンとエンジンが応えてくれるのは、〈ミミちゃん〉が、おおっぱいを揺らすのと似ている、少し高ぶって来たんだな。
俺が乗っても良いと受け入れてくれたんだと思う、胸が熱くなって堪らなくなるぞ。
チョークとアクセルを少し戻し、暖機運転の間に、ヘルメットが無いか見渡してみると、おっ、あったぞ、〈銭笛組〉のエンブレムがついた、工事用のヘルメットだ、縁起が良い名前じゃないか。
タタラッタ、クルっとアクセルを吹かせば、風が後ろへ流れていく、田舎の道のど真ん中、緑を切り裂いて、俺は一本の矢になった気分でいる。
何人もどんな事でも、俺を止められはしない、カブよ、俺を自由の彼方に連れていってくれ。
えっ、キッキッキー、うわぁ、動物が飛び出してきたぞ。
ふぅー、急ブレーキをかけさせやがって、死ぬかと思ったぞ、これからは安全運転で行こう。
この辺の獣は心を病んでいるらしい、細心の注意が必要だな、動物の生存競争は人間が思っている以上に熾烈なんだろう、命を賭けて道路を横断しなければならないんだな。
町に行って、カブにガソリンを給油してから、ドラッグストアへ入ってみた。
コーヒーとパンを買って、これが今日のお昼ご飯だ。
コンビニも無くて、店がドラッグストアしか無いんだ、過疎だからと思うけど、ドラッグストアの戦略はどうなっているんだろう。
なぜか残っている和菓子屋さん寄って、お土産に、いちご大福を沢山買えば、俺の所持金はかなり淋しいものになってしまう。
何でも良いから金を稼ぐ必要があるな、立派な神殿が三つもあるのに、なんて貧乏なんだろうと、じっと手を見る、早く帰っておっぱいを揉もう。
帰る前に、〈糸〉ばあちゃんへカブのお礼に、いちご大福を渡してあげた、ほぉほぉと目を細めて喜んでくれたみたいだ、女性は年齢に限らず甘い物に目がないんだな。
俺の巫女達も一緒だった、キャッキャッと嬉しそうにお茶会をしていたぞ。いちご大福で俺の株は上がったな、もっと上げるためには、やっぱり金が必要だ、金、金、金だ。
町の観光施設に無料Wi-Fiがあったので、それを使いパクった貴金属を売ってしまおう。
家具的な物もフリマなら、少しくらい金になるかも知れない。
また〈糸〉ばあちゃん家の近くの山には、不法投棄されている林道があるようなので、そこで長への贈り物を手に入れることが出来そうだ。
環境に良い事をするんだから、何も問題は無い、地域と地球に感謝されるに決まっている。
国連が提唱しているSDGs(エス・ディー・ジーズ)に則った行動だよな。
環境省から表彰されても良いくらいだ。
〈糸〉ばあちゃんも、故郷が綺麗になるんだから、喜んでくれるはずだ。
〈さっちん〉を連れて行く約束も、守ってあげたいな、〈さっちん〉も会ってみたいと乗る気になっているようだ。
〈さっちん〉と〈糸〉ばあちゃんは、何となくだけど気が合うような感じだ、二人とも苦労した働き者って言う共通点がある。
二人の旦那は浮気性だしな。
トドママと違い〈糸〉ばあちゃんは、〈さっちん〉を可愛がってくれると思う、カンだけど。
お漬物の作り方を教えてもらい、おはぎとかを二人で作ったりするんじゃないかな。
だけど玉の噛みかたは、習わないで欲しい、そんなの下品じゃないか。
乳首を軽く噛むだけにしてくれ、それが俺のウィークポイントなんだよ。
そして俺は、検証しなくてはならない、このまま放置じゃすまないに決まっている。
沢山のオレンジの腺だ。
スマホで写真を撮ろうとしたけど、出来なかったんだ、通常の物理現象じゃ無いからだろう。
しょうがないので、一つずつ手書きで白い布に書き写している最中なんだ。
試しに一つの線を検証したら、俺が行った事のある建物の前に、異界への隙間が生じていた。
これは大神殿になったためと推測するしかないな。
飛躍的に鋭い刃物の能力が上昇したという事だ、うーん、違うか、神殿が大きくなったせいか。
どっちでもいい、ようは色んな事に使えるぞ、金を稼ぐ事だって可能だと思う。
今のところ、稼ぐ方法は思いついてはいないけど、チートっぽいものだ。
言わば瞬間移動的なことが可能となる、〈糸〉ばあちゃんにもらったカブと合わせれば、俺はとんでもない行動の自由を手に入れたんだよ。
能力のすごさに怖くなってしまう。
怖いと言えば俺の四人の巫女につきる、もうさせてあげないと言われたら、俺は不幸のどん底だ。
あそこの角度は上がっても、頭は上がらない、キュっとあそこで俺は締め付けられている。
もっと締めて欲しいよ。
一番大切な巫女のとの関係は、巫女どうしが話し合った結果、俺が三つの神殿を日替わりで通う事になった。
一種の通い婚だな、複数だけど。
俺の意見は聞かれなかったが、文句を言える立場じゃ御座いませんのです。
おっしゃるようにいたします、だから、複数婚を許してね、そして玉は齧らないでおくれよ。
今のところは舐められるだけだから、なんとかなりそうだ、ホッと一息をつけている。
ただし、課題はまだある、それもてんこ盛りだ。
〈多角回廊〉に、あとどれだけ角があるのか、すごく心配になる。
まだ何個所も角があるような気がしている、そこにそれぞれ別の国があると思う。
攻められても大変だし、占領しても大変だ、また巫女が増えてしまうよ。
巫女が男の可能性も高い、どうしたら良いんだ、俺にそんな事が出来るのだろうか。
俺の体はもつんだろうか、今いる巫女の気持ちも心配になる、どこまでいっても人生って試練が待っているんだな。
気楽だった四畳半一間の生活が、今思うと懐かしいな、缶酎ハイを飲めれば幸せだった。
だけど今は、自分の命より大切な巫女がいる、お金よりも大事なおっぱいがあるんだ。
それを揉んで、絶対に守ることが、俺に与えられた使命だと思う。
切り裂いた過去に、俺はもう戻れない。
― 完 ―
※※※※※※※※※※※※
読んで頂きありがとうございました。
中途半端な終わり方になり、申し訳ございません。
このまま書き続けますと、また大長編になりそうです、そのため、ここで終わりとさせて頂きます。
後少しで切りが良い10万文字になるため、そこまでは機会があれば書くかも知れません。
出来ましたら、新作の方もよろしくお願いいたします。
「スローライフを探して、風の吹くまま、異世界の町から町へ」
https://kakuyomu.jp/works/16818093094143808833
また似たような作品は、こちらになります。
150万文字ありますので、読み応えだけはあると思います。
「異世界転生したら許嫁がいたんだ(エッチなことでも怒らないんだ)」
女子高生と同棲して、異界で巫女にサービスされる、俺ってなに 品画十帆 @6347
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