第5話 親密と知識

 「うっ、それはそうだけど。 知り合ったばかりだし。 その、もっと親密になって、恋人になってからじゃだめかな」


 「んー、だめだと思うな。 親密になっても、恋人にはなれない気がする」


 「えっ、なんで」


 「俺は女に、全くモテないないからだ」


 「そ、そんな事は無いと思うよ」


 〈さっちん〉の目が泳いでいやがる、俺は真実を言ったらしい、とても悲しいぜ。


 「きゃっ、触らないでよ」


 俺は〈さっちん〉に抱きついて、強引に抱き寄せた。

 抵抗は止めないけど、殴ってくるような事は無い、異界に置き去りにされるのを恐れているんだろう。


 「〈さっちん〉は、可愛くて美人だから、抱きたいんだ。 一目惚れしたんだ。 だから良いだろう」


 〈さっちん〉を抱きしめながら、俺は歯の浮くような台詞せるふかさねる。

 無言で抱きつかれたら怖いし、褒め言葉を言わないよりは、言った方がマシだと思う。


 「嫌だぁ。 離してよ」


 「〈さっちん〉に、俺は惚れているんだ。 だから、キスしたいんだ。 約束だろう」


 「うっ、キッ、キスならさせてあげるわ。 でも、それ以上はダメなんだからね」


 俺は〈さっちん〉の頭を、ガッチリとホールドして、ぶちゅとキスをかました。

 ただ、過度に嫌われてもいけないから、あくまでも優しく、ソフトにだ。


 一度で良いからソフトめんの給食を食べたかったな。

 けど〈さっちん〉の唇は、ソフト麺よりも柔らかいと思う。


 桜の花びらの真ん中に、線を引いたような、小振こぶりで愛らしい唇だ。


 俺は〈さっちん〉の花びらを、夢中で舐めて吸っている、〈さっちん〉は目をギュッと閉じて耐えているらしい。

 

 その耐えている顔が、何ともいじらしいな。


 俺はキスを続けながら、〈さっちん〉の着ているジャージを脱がし始めた。

 ジャージと言うのは、着るのも簡単だけど、脱がすのも容易よういだ、便利な服だよ。


 〈さっちん〉は俺にキス&ホールドされながらも、頑張って頭を振っている、逃げたいんだろうな。


 「ぷはぁ。 あぁ、脱がさないで、お願い。 やだよぉ、初めては、好きな人にあげたいの」


 俺は〈さっちん〉の願いを聞かずに、裸にしてしまった、女性は全裸になると抵抗が弱まると俺の知識にはある。


 高校生の時に、部室で読んだエロ本にそう書いてあった、十年以上も読みがれたエロ本だから、きっと真実なんだと確信している。

 幾人いくにんもの童貞を卒業させた、名著めいちょに決まっているぞ、その証拠が俺だ、今素人童貞を卒業するんだ。


 「〈さっちん〉の裸は、まぶしいほど美しい。 まるでミロのビーナスだ。 美の女神様と呼びたい。 ますます俺は〈さっちん〉のとりこだよ」


 「うぅ、〈よっしー〉は優しい人だと思っていたのに、ひどいよ。 約束だから、しょうがないけど。 ほんとに私の事が好きなんでしょうね。 だったらもう良いわ」


 〈さっちん〉はもう色々な事を諦めてしまったらしい、理由を探して自分をだまそうとしているのだろう。

 言い訳を与えておいて良かったな。


 トドママが生娘と言っていたので、信用はまるで出来ないけど、ひょっとしたらと思い、懇切丁寧こんせつていねいな行為と気遣きづかいに努めてみた。

 指使いも懇切丁寧だったのは、言うまでもない。


 プロ相手にみがいた、超精密な技を見せる時がきた、眼を見開いて見るが良い。


 あっ、全部嘘です、目は閉じてて良いです、プレッシャーで緊張しますので。


 行為の最中も、俺は「好きだ」「綺麗だ」「可愛い」の連射と、キスを欠かさない。

 これは、たぶん、AVの影響だと思う、見た作品が多過ぎて特定不能だ。


 俺は不能じゃないから、〈さっちん〉の中で、ビキビキしている。

 最後はあわてて外界に放り出したのだが、主神像にかかってしまった、ずいぶんしてなかったので、元気が良すぎだ。

 三メートル以上は飛んだと思う、最長到達記録を更新しているな。


 「うぅ、痛いよ。 ひどいよ。 この悪魔め。 ぐすぅ」


 神様の前で何てことを言うんだ、でも強引にしたのは、やり過ぎだったと反省もするな。


 「ごめん、〈さっちん〉。 だけど、君の体は素晴らしかったよ」


 「うぅ、言うな。 私は悲しいんだぞ。 うぅぅ」


 やった後だから、心がこもって、いなかったのかも知れないな。

 次回からは、もっと心にも無い事を口走ろう。


 俺は、おのれの欲望のために、可哀そうな事をしたと思ったから、裸の〈さっちん〉を優しく抱きしめてあげた。

 〈さっちん〉は自分からは何もしないが、そのまま大人しく抱かれている、たぶん、俺との関係を本格的に諦めたらしいな。


 男と女の関係になってしまったので、もう失くすものは、命しかないからか。

 俺が命まで取らないと、分かっているからだろう。

 必死になって抵抗しなかったのは、命の担保たんぽだと思ったのかな。


 聞いても答えないし、聞いて良い話じゃ無いと思う。


 俺と〈さっちん〉は、そのまま眠ってしまったようだ、朝起きたらもうお昼前になっていた。

 思っていたより、二人とも疲れていたらしい。


 駅前のコンビニ寄って、パンとペットボトルのコーヒーを買い、ちょうど来た電車に飛び乗った。


 この町にはもう用はない、二度と来るか。


 「うわぁ、汚いし狭いね、この部屋。 二人じゃキツイよ」


 〈さっちん〉は遠慮が全く無い、肌を重ねたからか、元からの性格か、両方だな。


 「そう言うなよ」


 「ふん、明日からもっとかせぎなさいよ。 歯磨きとか日用品を買ってくるから、お金をちょうだい」


 「えぇ、もう、お金なの」


 「当たり前でしょう、早くしてよ」


 俺はしょうがないので、なけなしの一万円を、〈さっちん〉の差し出した、手の平へ乗せてあげた。

 〈つばさ君〉達が俺にくれた金だ、貴重なんだぞ。


 「これっぽっちか」


 〈さっちん〉は、汚い言葉を吐きながら、買い物に行ってしまった。


 あぁ、この先が思いやられるな。

 抱かなければ良かったか、あの地方都市で見捨てておけば良かった。


 後悔先に立たずだ、立っちゃった俺はなんてスケベなんだ、でも抱いちゃうよ。

 ピチピチの高校生だもん、トロトロの女の子だもん、お汁が出ちゃう。



 俺は真面目だから、半グレの〈はると〉へ報告をするために、公園へ行く事にした。

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〈金に〉飢え〈職を〉持たず、〈夢は〉奪うな、〈神へ〉与えよ 品画十帆 @6347

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