弾き語りシンガー手記
つちや あすか
シンガーソングライターゆらりの手記【1話完結】
私が、しのうと決めたよるに。
知らない子が錦糸町駅前で歌ってたの。
へったくそなギター。
へったくそな歌声。
私はそんなへったくそに惹かれて、
いのちを救われたんだ。
その子は「灯(あかり)」って名乗ってた。
男のくせに随分かわいらしい名前だなって。
名前の通り繊細でかわいめの歌い方だった。
最初はなに、そとで、
人前で歌っちゃってんのって。
思った。
そんな一生懸命に叫んじゃって。
あんたもどうせしぬんだよって
心ん中で馬鹿にしてたらさ、
「ぼくは強く強く火を焚いて」
「弱く弱くても生きてくから」
「お前はどうなんだよ手を叩いて」
「あざ笑ってみてるお前も生きろよ」
「どんな命も灯火(ともしび)繋げ」
って歌ったんだよ、そいつ。
私みたいなクズも救おうとしたんだよ。
人のこと嘲笑ってた私にも
生きろよって。
恥ずかしかったよ私は。
ぼろぼろ泣けたよ、駅前で。
人前で咽び泣いたよ。
私をステージに上げた灯。
私はその日から生きると決めた。
そして、灯あかりの歌を聴いて
心が揺らいだから。
灯が揺れるように。
私は
ゆらりって名前になったんだ
あいつは馬鹿だから
私が歌い始めてから、程なくしてしんだ。
私を置いて灯火を自分で消した。
生きるよって歌ってたくせに。
馬鹿だよ、病気だったんだ。
灯が消えないように
あたしはこの先も歌い続けるからね
またね、灯あかり。
弾き語りシンガー手記 つちや あすか @asuka_s123
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