第4話 神様の導き

 このどうくつ、おもったより奥深おくぶかいぞ。


 おれ身体からだちいさいから、そうかんじるだけってワケじゃなくてだな。

 人間にんげん基準きじゅんにしてもふか洞窟どうくつみたいだ。


 おかげで、ものになりそうなものが大量たいりょうつかるぜ。


 とくにキノコなんかは、どくがあるかもしれないから以前いぜんなら警戒けいかいしてたんだけど。

 いまおれには見物する瞳スペクテイターがあるからな!


 問題もんだいは、大量たいりょうつけてもってかえ手段しゅだんかぎられてるってことか。


 そういう意味いみでも、イザベラにははや回復かいふくしてもらわなくちゃだな。


 そんなかんじで探索たんさくすすめていると、おれ右腕みぎうで文様もんよう明滅めいめつはじめたことにいた。


「なんだ? もしかして、またとびらてくるのか!?」


 かえみちみちしるべをかべきざんでたおれは、あわてて周囲しゅうい見渡みわたす。


 だが残念ざんねんなことに、とびら姿すがたあらわ様子ようすはないみたいだぜ。


 そうとなるとになるのは、明滅めいめつしてる文様もんようだよな。


 ためしに見物する瞳スペクテイター使つかってみよう。


「なになに? 欠乏けつぼう文様もんよう見物する瞳スペクテイター……とく変化へんかは無いか? おっ! 追加ついか説明せつめいてきたぜ!」


 追加ついかされた説明せつめいはこんなかんじだ。


使用頻度しようひんど上昇じょうしょうともない、さらに詳細しょうさい情報じょうほう取得しゅとく可能かのう


 なんだこれ。

 どうなってんだよ。


 ためしてみたらたしかに、欠乏けつぼう文様もんよう以外いがいものも、説明せつめいくわしくなってるぜ。


 もしかして、使つかえば使つかうほど、能力のうりょく上昇じょうしょうしていくのか?


 へんはなしだよな?

 普通ふつうからだ酷使こくしすれば、疲弊ひへいして能力のうりょくちていくだろ。


 まぁ、便利べんりだからいいけど。


 それに、へんはなしえば、おれがナビゲーターとやらになってる時点じてんで、異常いじょうなんだよ。


にしすぎてもなに解決かいけつしないよな。それよりも、そろそろイザベラのところにもどるとするか」


 さすがにほとぼりもめてるころだとねがいたいぜ。

 もちろん、お土産みやげのケイブベリーは必須ひっすだ。


 かえりの目印めじるしたよりに、もと場所ばしょもどったおれは、スヤスヤと寝息ねいきててるイザベラをつけた。


「さすがにつかれてたんだな」


 彼女かのじょがいつからこのどうくつにいたのかはらないが、あまり十分じゅうぶんやすみはれてないことは想像そうぞうできる。


 そんなイザベラをゆっくりとやすませるために、おれはケイブベリーを頬張ほおばりながら、見張みはりをすることにしたんだ。


 それからどれくらいの時間じかんったんだろうな。


 おれたちはイザベラがあるけるようになるまで、おなじような日々ひびごした。


 おかげで、おれ見物する瞳スペクテイターはかなり詳細しょうさい情報じょうほうまでくことができるようになったぜ。


 たとえば、イザベラがてる衣服いふくが、かなりながあいだあらわれていないこととかな。


 いや、べつりたかったわけじゃねーぞ?

 いろいろとためしてるなかで、偶然ぐうぜんちまったんだよ。


 それに、こんな環境かんきょうきてくなら、それくらいえれるようにならないとだからな。


 ほかにも、地面じめんからみずながれた痕跡こんせきけたり。


 れそうになってる植物しょくぶつ見分みわけることができたり。


 使つかいこなしていけば、かなり便利べんりちからだぜ。


 自称神様じしょうかみさまよ、おれいまはじめてアンタに感謝かんしゃしてるぜ。


「なにしてるの?」

かみ感謝かんしゃをささげてるのさ」

かみ? そんなものをしんじてるなんて、意外いがいね」

「おいおい、そんなことをったら天罰てんばつくだされるぜ?」


 あきれたってかんじでくびるイザベラが、おれいてさきあるいてく。


 とはいえ、彼女かのじょはまだあし万全ばんぜんってわけじゃないからな。

 おれあしでも十分じゅうぶんいつける速度そくどだ。


「よぉーし。ようやくうごくことができるようになったからな。まずはどこにく? キノコの群生地ぐんせいちか? それとも、ケイブベリーにしとくか? ちかくまで案内あんないできるぜ?」

「どちらかってわれたら、まよわずベリーだけど。いまはそれよりも優先ゆうせんしたいものがあるから」

「そうか、まぁ、まずはやっぱりこの洞窟どうくつからすのが先決せんけつだよな? それにかんしてはおれ賛成さんせいだぜ!」


 くら洞窟どうくつなかっていうのは、どうしてもれないもんだ。

 可能かのうならいますぐにでも、天井てんじょういわすすめて、地上ちじょうたいところだ。


 ひさりに青空あおぞらおがみたいなぁ。


 なんてかんがえながらあるいてたおれは、いつのにかイザベラをしちまってた。


 正確せいかくには、彼女かのじょあしめたっていうのがいいかな。


「どうしたんだよ。いてくぜ?」

「ちょっとって。ルース。あなた、なにってるの?」

「だから、ボーっとってたらいてくぜってってんだよ」

「そうじゃなくて! 洞窟どうくつすって、もしかして本気ほんきってたの?」


 なんだ?

 そこにっかかったのか?


 それに、『本気ほんきってた』ってのは、なんのことだ?


 自分じぶんかんがえててもらちかないか。

 ここは素直すなおに、彼女かのじょかんがえをくとしよう。


「それはどういう意味いみだ? おれ、そんなにへんなことったか?」

「そうね。すごくへんなことをった。でも、そっか、本気ほんきだったらへんじゃないのかも?」

「なんだよ。にごさずにはっきりってくれ」

「……この洞窟どうくつから地上ちじょうたら、一瞬いっしゅんころされるから」

「はっ!? 焼き殺される!?」


 なんでだよっ!

 そうおうとしたおれは、すぐにくちをつぐんだ。


 だってそうだろ?

 そんな不条理ふじょうりけてくる存在そんざいなんか、アイツしかいないんだ。


「ソヴリンか」

「うん」


 やっぱりな。

 でも、1つだけ理解りかいできないことがある。


 おれってるソヴリンは、するどやいばかぜなにもかもをやつだ。


「なるほどな。ここのソヴリンはころすようなやつなのか」

「なにそれ。まるで、ほかのソヴリンがいるってかただけど」


 まぁ、イザベラからするとそうれるよな。


 このさい正直しょうじきおしえてやりたいところだが。

 それはゆるされることなのか?


 あの自称神様じしょうかみさまいつけで、おれまれわったことをつたえちゃダメらしいから。


 その説明せつめいきではなすのは、ちょっとむずかしいがするぜ。


 というわけでここは1つ、ごまかしてしまおう。


っただろ? おれはソヴリンをほろぼす手伝てつだいにたって」

「……だから、わたしらない情報じょうほうってると?」

「そういうわけだ!」


 都合つごうよく解釈かいしゃくしてくれてたすかるぜ!


 むねりつつ、内心ないしんバレないかヒヤヒヤしてるおれを、イザベラがしずかに見下みおろしてくる。


「な、なんだよ」

「……本気ほんきなのよね?」

「だから、そうだってってるだろ?」

かった」

かればいいんだよ。かれば。それじゃあ早速さっそく……」


 はなしらそうときびすりながらそうったおれ


 でも、そのあと言葉ことばつづけることができなかったんだ。


 なぜなら、不意ふい身体からだをわしづかみにされたからな!


「ちょ! なにすんだ!」

本気ほんきなんだよね? じゃあ、ホントに手伝てつだってもらおうかな」


 どこか興奮気味こうふんぎみのイザベラ。


 そんな彼女かのじょ鼻先はなさきげられたおれは、文句もんく1つえなかった。


 ごまかしたばちたったってことだよな。

 このままじゃ、誤魔化ごまかしが誤魔化ごまかしじゃなくなるぜ。


 これもまた神様かみさまみちびきなのかもしれねぇな。

 くそったれが。

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ドンゾコナビ ~天罰としてナビゲーターに転生させられました~ 内村一樹 @ranrenron

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