二日酔いの朝
風馬
第1話
洛陽の朝は、まだ静寂の中に包まれていた。だが、董卓の寝室の扉が開かれると、静けさは無惨にも壊された。
「董公、おはようございますぞ!」
酒臭い息とともに、軍師・李儒がフラフラと部屋に入ってきた。彼の頬は赤らみ、瞳は焦点を失っている。
「おい、李儒、何だその顔は。」
董卓は布団の中から顔を出したばかりで、まだぼんやりしていたが、李儒の異様なテンションにはすぐ気づいた。
「ふふふ、董公、わしは夜通し考えておりましたぞ!この国を支配する大計を!」
李儒は手に持った杯を振り回しながら、声高らかに叫んだ。
「お前、酒臭いぞ。それにしても、夜通し飲む軍師がどこにいるんだ。」
董卓はため息をつき、頭を掻きながら布団から起き上がった。
「飲んでこそ知恵が湧くのですぞ!たとえば、董公、この庭に大きな池を作り、そこに酒を満たすのはどうですかな!」
李儒が大袈裟に腕を広げる。
「酒池肉林の話か?お前、酔ってなきゃそんなこと言わないだろ。」
董卓は半ば呆れながら、壺に手を伸ばしたが、中身が空だった。
「おい、これもお前が飲んだのか!」
「ふふふ、董公の酒なら、わしの知恵の糧でございます!」
董卓は拳を振り上げたが、酔っ払った李儒のフラフラとした動きにパンチは全く当たらない。
「止まれ、この酔っ払い!」
「董公、酔うのもまた戦略ですぞ!ほら、少し飲まれませぬか?」
「誰が飲むか!この朝っぱらから!」
ドタバタと追いかけっこが始まり、二人の騒ぎは城中に響き渡った。
朝の日差しが部屋に差し込む頃、李儒は床に倒れ、董卓は溜め息をつきながらまた布団に潜り込んだ。
「やれやれ、こんな軍師に未来を任せて大丈夫なのか…。」
だが、酔いが冷めた李儒が夜明けに起きる頃には、また冷静な策士の顔に戻ることを董卓は知っていたのだった。
二日酔いの朝 風馬 @pervect0731
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