交差する三つの組み合わせ、ひとつの青春。

  • ★★★ Excellent!!!

友情、幼なじみ、美少女の要素が詰まった百合小説って、やっぱり最高に尊くないですか?

本作はキャラクターの描写が丁寧で、それぞれの個性もはっきりしています。彼女たちは性格的に欠点もありますが、それゆえ自然とお互いの足りないところを補い合う関係が生まれていて、どのペアも魅力的に感じられます。

また、視点の切り替えが巧妙で、切り替わるたびにキャラクターの心情が鮮やかに伝わり、ストーリーもテンポよく展開していきます。三組の百合関係を同時に描くこと自体が難しいですが、作者は「演劇部の再建」という共通の目標を通して、それぞれの心のつながりを丁寧に描きつつ、キャラクター同士の関係を巧みに絡ませ、お互いが影響し合いながら成長していく様子を自然に表現しています。

特に感心したのは、一見緩やかな構成の中に、実は緻密な関係性や伏線が巧みに散りばめられていることです。最後にはすべてのエピソードが無理なくひとつに収束し、感情が高まる見事なラストにつながっています。

限られた分量と設定の中で、感情、人物関係、構成のバランスをここまで綺麗に取るのは容易ではなく、その完成度の高さに心を惹かれました。

どのページからでも自然に作品世界に入り込めるので、ぜひ、この三組の百合関係が織りなす青春ストーリーをじっくり楽しんでください。