好感度が足りない

「王子様」

「聖女様、私のことはお気軽にエリックとお呼びください」

「じゃあエリック。トイレどこ?」

「遠慮のない聖女様は可愛らしいですね」



今朝、起きたら王子様が部屋にやってきて、王子様に嫌味を言われた。それはそうとその後ろにいる緑の髪の人は誰?と視線を移す。妹は感激してはわわ…となっているのは無視。



「今日から彼は君たち聖女様の教育係です。何かございましたら彼に質問するように」

「え、だる」

「はい!推し様の言う通りにします!」



折角ゲームの世界に来てまで勉強とかだるいなあ〜と口に出すと教育係の男性に前まできて頬をつねられた。いてて、と抗議すると叱られた。



「殿下になんて口を聞くんだ。お前には厳しく指導してやらないとな」

「ふふふ、やってみろ。私のサボりは一流だぞ」

「そんなことで胸を張るな」



というか、妹が推し推し言ってんだけどこいつも攻略キャラか。え、全然愛嬌ないんだけど。乙女ゲームしたことないからわからんけど、恋に落ちる想像ができない。



「俺の名前はマルク。殿下の側近であり、幼馴染だ。いいか、俺は優しくしない。厳しく指導するから覚悟しろ」

「お姉ちゃん!聞いた!?サンプルボイスと同じボイス!!生で聞けた!!感激!!」

「おー、聞いた聞いた。サンプルボイスは聞いたことないけども」

「何を言ってるんだ、お前たち」



きゃっきゃと騒ぐ妹。えー、このキャラと絡むの?めんどくさそー。

早速サボりたい気持ち、出てきたかも。

呆れるマルクの肩に手を置いてエリックは楽しそうに言った。



「まあまあ、賑やかになりそうで良いじゃないか」

「エリック…お前の頼みならと教育係を引き受けたが、聖女が二人とは…」

「二人じゃないよ。どちらが一人」

「…そうだったな」

「でも彼女たちは姉妹だから優しくしてあげてね」

「…はあ…」



エリックは比較的優しそうで、味方になってくれそうなキャラだな。マルクは厳しそうだから仲良くなるには時間がかかりそう。

聖女のこと色々聞きたいんだけど、楽しんでる妹に水を差すわけにも行かず…。

エリックに後で色々聞いてみるか。今まで聖女様はどうしたのか。

「じゃあ、任せたよ」と言うエリックに私はあ、と声をかけた。



「エリック」

「?はい、聖女様。何でしょうか?」

「私のこともユウって呼んで良いからね。お堅いの苦手だし」

「…。機会があれば」



にこりと愛想がいい王子様はお辞儀して部屋を出た。あー、あれは呼ばないパターンだ。日本人によくある、行けたら行くと同じ意味。

その様子を見ていたマルクは言った。



「聖女様は異界からの客人だからな。殿下が馴れ馴れしくすることはない」

「ほーん、大変だね」



そしたらあなたも少しは優しく接してくれてもいいんじゃない?って思ったけど、ややこしくなりそうなので黙っておいた。なんて優しい私。

すると妹がすすす…と近寄って小声で言ってきた。



「マルクは好感度が足りないって言ってるんやで」

「乙女ゲーマーがおると心強いなあ」

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姉妹で聖女様として転生したけど、興味ないので妹に譲ります ゆずぽんず @panchi0127

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