第6話 お前、○○に惹かれてないか?
そんなこんなで、入学してから2週間程が経った。
海斗と優凛はお互いの意外な一面を知りながらも、なんの関わりも持たず、それぞれの学校生活を楽しんでいた。
そのころは部活が始まる直前で、生徒達はそれぞれ、どの部活に入るかを考えていた。海斗ももちろん、考えていたわけさ。
「う~ん。中学のころもバスケ部だったし、高校でもバスケ部にしようかな~。
やっぱり、今までやって来ていて、慣れていることをやった方が良いしな」
海斗はやったことがないことをするのも良かったのだが、そのときはバスケ部に入る方向で考えていたのだった。
だが、海斗は心の中で
「本当にやりたいことよりも、やった方が良いこと、を選ぼうとしているのかもしれない」少しだけそう思った。
優凛はもうすでに、どの部活に入部するかを決めていた。
それは「吹奏楽部」
中学のころからやっていて、また続けたいと思っていたからだった。
「楽器はそうだな、前やっていたからパーカッション(打楽器)にしよう!」
実は心の中では
「トランペット(ペット)をやってみたい」と思っていたのだが
「やったことないしな。不安だな。だったらパーカス(パーカッションの略)でいいかな」そう考えていた。
ある日の放課後、バスケ部の見学を終えた海斗が帰ろうとしていると、音楽室の方から、ある曲が聞こえてきた。それは、海斗が昔好きだったアニメの主題歌だった。
「あ~懐かしいなぁ~。この曲。めっちゃいい曲だよなぁ」と海斗は懐かしくなった。
しばらくその音色を聞きながらボーっとしていたが、次に続いた曲も海斗がよく知っている曲だった。
「自分が好きな曲を演奏するのって楽しいだろうなぁ~」
海斗はもう少し近くで聞きたいと思ったので、すこ~しだけ、音楽室に近づいた。すると……。
なんと、優凛が出て来たのさ。
「え?アイツ、吹奏楽部だったのか?」海斗は少しびっくりした。
なんとなくだけど、優凛の明るく活発な性格からして、運動部かな?と思っていたからだった。
優凛は海斗の姿に気づいても、見なかったふりをした。
心の中ではこう呟いていた。
「なんていうか、恥ずかしかったというか。声かけたかったけど、なんてかけていいか、分かんなかったんだよ」ってね。
知らんふりしている優凛を見て、海斗は声をかけた。
「お疲れ様。なぁ、松永さんって中学のとき吹奏楽やってたの?」
「そうだけど。お前は?」
海斗はバスケ部に入ろうと思っていることを伝えた。
「お前、なんでバスケ部に入ろうとしてんの?」
「いや、中学んときやってたからだよ」
すると優凛はこう言った。
「お前さ、もしかして吹奏楽に惹かれてないか?」
海斗はドキっとした。優凛は続けてこんな事を言った。
「もしやりたいなら、やってみたら?どうせやるなら、やった方が良いことよりも、本当にやりたいことをやった方がいいだろ?」ってね。
そこで海斗はハッとした。
「俺、もしかして、本当にやりたいことよりも、やった方がいいことばっかり考えてたのか?」
さっすが優凛~~♡そーゆーの気づくの、才能じゃん?笑
海斗はなんだか自分の心の中を見透かされたみたいで、ドキドキした。
「コイツ、なんで俺の思っていることが分かるんだよ。っていうか俺、やっぱり本当にやりたいことよりもやった方が良いことを選ぼうとしているのかな」
海斗は「じゃあまたね」と言い、その場を去った。
バチが繋ぐ愛〜海斗と優凛の物語〜 服部優香 @kixichan12
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