【掌編小説】テーマ・悪役令嬢・六畳一間
沙路 涼
第1話 悪役令嬢・六畳一間
「なによ、お父様ったらこんな田舎のボロアパートに押し込めるだなんて!お見合いの席で相手にワインをかけただけじゃない!わたしは自分が決めた人間と結婚するのよ!邪魔する人間は皆敵だわ!」
お嬢様は地団太を踏みながら続けた。
「それを邪魔するじいやもメイドも遠ざけて何が悪いのよ!わたしは家を繁栄させるための道具じゃないのよ!」
「お嬢様、落ち着いてください。これからしばらくここでわたしと二人で生活せよと旦那様からのお申しつけです。廊下で騒ぐとアパートの住人様方から白い眼で見られて今後の生活がより不憫になるかと……」
わかったわとお嬢様はすんなり入っていただけた。六畳一間の家には何もなく、辛うじて和式のトイレとバランス釜のお風呂はあった。
「ほんと何もないわねー……」
張り替えられたばかりであろう若い畳の上でお嬢様は仰向けになって天井を見上げていた。
カーテンもなく窓から見える景色は宵闇で時折明かりにつられてこつんこつんと虫がぶつかる音が聞えた。
「本日は夜が遅かった為、何もご用意できませんでしたが、湯あみはされますか?」
「いえ、いいわ。疲れたからからとりあえず寝ましょ?」
ここにきてという仕草で隣へ向かうと、怖いから私の隣に寝なさいと言われたのでお嬢様の隣で横になった。
「電気消しますよ?」
お嬢様は反対を向いていたがこくっと頷くのがわかった。
電気を消して横になるとお嬢様が申し訳なさそうに震えた声で声をかけてきた。
「……私のせいで、こんな場所まで連れて来てごめんなさい……。わたしは好きな人が隣に居ればどこにでも行ってもいいと思っていた。でも好きな人に迷惑をかけたいわけじゃなかったの……ごめんなさい……」
お嬢様の震えている肩を掴んでこちらへ向かせた。
「わたしも大好きな方に仕えていればどこにだって行かせていただきますよ。一生お仕えさせてください。」
お嬢様を引き寄せてそっと抱きしめた。窓から伸びた月明かりがお嬢様を照らすと、その顔は幸せそうであった。
【掌編小説】テーマ・悪役令嬢・六畳一間 沙路 涼 @sharo0826
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