第3話 お節介

昼休み。午前を過ぎ腹も程よく減ってきた時間帯、生徒たちは備え付けの食堂へと足を運ぶ。光明高校には食堂があり、そのお値段も学生の懐事情に優しく味も良いため殆どの生徒が利用し、この時間になるといつも人で賑わっている。私のクラスの生徒もその殆どが食堂へと足を運んでおり、その中で私はポケ―と窓の外を眺めていた。すると不意に、真横から声をかけられる



「………よ、お前は行かねぇのか?」


「…え、あっあぁそうだね、気づかなかったや!あははー……」



声をかけてきたのは山田くんだった。私はその事に気づき少し動揺した返しをしてしまう


あ〜もう、まともに顔が見れない…ッ!私ってこんな乙女チックな感じだったっけ?



「そーか、んじゃ塩r……………んん゙ッ!…お前も一緒に行こうぜ」



………?今なにか言いかけ…気のせいかな?まあいっか


 

「そうだね…そういえば君はまだ来たばっかだし、食堂の場所知らないか…じゃあさ!一緒に行こ!山田くん!」


「……………あー、そーだな」



そういい私は席を立ち、食堂へと移動を開始する。その私の後ろから遅れて山田くんもついてくる

 

あーやば、苗字呼びでもなんだか小っ恥ずかしいし、名前呼びとか耐えられないんじゃない?私


それでも、その感情を表に出さないように、あたかも自然体を装い喋る

 


「そうだ!まだ私自己紹介してなかったよね!私は黒峰 塩楽くろみね えんら!」


「そっか、よろしくな塩楽」


「んん゙ッ!!」


「え?ど、どうした!?」

 


…心臓に悪いっての!フラグ回収早すぎ?



「なんでもないヨ…」


「あー…そうか?ならいいんだけどよ」



どこか困惑気味な山田くん。ごめんね挙動不審で…でも山田くんの距離の詰め方も良くないと思うんだ、初対面の女子に名前呼びからは流石になくない?いや私は全然良いんだけどね!?

 

そんなこんなで、私達は食堂へ向かうのだった…




















――――――――――




















日が落ち、辺りが暗闇に包まれた頃。光源となるのは街頭しかなく、その街頭も控えめな光を発しているためか足元が暗く見えづらい。そんな状態で、もはや街頭の意味があるのかどうか分からないが今はそれが好都合だ


俺はスマホを懐から取り出し、ある人物へと電話をかける


数回の着信音が鳴り、電話が取られる



『やぁ■■、最後にあってまだ1日足らずだが、調子はどうだい?』


「なにも問題ねーよ、ってかそっちで呼ぶのかよ」


『いいじゃないか別に、たまにはこっちで呼びたいときもあるんだよ』



電話越しに、不貞腐れたような声が響く。案外面倒くさいなこの人………いやまぁ知ってたけど



『って違う違う、そうじゃない。君の学校での出来事が聞きたいの僕は!』


「……特になんもねーよ」


『あ、嘘ついたね?今の間は絶対誤魔化そうとしてる間だ!』



めんどくせぇ



「めんどくせぇ」


『おーい?また心の声漏れてるよ―?』



純粋に電話を切りたい、切実に。だが今何かしらを答えなければ次の日も、そのまた次の日もしつこく聞いてくるだろう。この人はそういう人だ



「はぁ…俺のに会ったってだけだ」


『恩人…あぁ、そういう。にしても偶然だねぇ』


「あぁほんとにな、最初驚いて固まっちまったよ」



本当に、本当に偶然なのだ。そもそもあの学校に行く手配をしてたのはこの人だし、この人もこの人でその事を知らなかった。というより知らない。まさか塩楽さんとこんな形で会うことになるなんて………向こうからしたらこっちが一方的に相手のことを知ってるだけだけど



『ふ〜ん、まぁこれ以上詮索するなんて野暮な事、しようとは思わないけどね』


「…助かる」


『いいっての、人には言えない秘密の1つや2つは誰しもが抱えてんだからさ』



『じゃあね』と言い電話を切られる。ほんとにそれだけの用事で電話かけてきたんだこの人………

 まぁいいかと画面が暗くなったスマホを再び元あった場所にしまい、帰路につく


帰っていると言ったが、実は今から向かう場所は正確には俺の家じゃない。そもそもここは俺が元いた場所とはだいぶ離れのところだ、おそらくはあの人が「こういう時くらいは仕事を忘れろ」って意味で組織の本部がある場所から離した場所の学校に転校させたのだろう。変なところで気が利く


しかし、そうなると今度は家がないという至極当たり前な事が起きてしまう。しかしそこは脳筋なあの人らしい、その付近の家を一括で購入したとかなんとか。今ではその家で生活をする事になっている。一昨日ようやく荷解きが済んだから、今回はのびのび過ごすことができそうである



「……あー、そういや晩飯がまだだったか」



途中、晩ごはんをまだ食べていないことに気がつく。家に食材らしい食材もないので、近くにあるコンビニなんかで適当に買ってから帰るか


本当なら食べずに家に直進しても良いのだが、それだとあの人がうるさいので渋々、近くのコンビニをスマホで調べる。あの人だって禄に食べてないくせに、俺には厳しいんだよなぁ…母親かっての



「…お、あった」



スマホで検索し探していると、ちょうど家から程よく近い場所にコンビニを見つける



「よーし、なに食うかな…まあ腹にたまれば何でも良いんだけど」



そう言い、コンビニへと足を運ぶのだった

 

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任務:殺しの仕事休んで学校通え「…は?」 ばぐひら @baguhira

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