第5話 花野香織、恋を知る
花野香織です。
好きな人ができました。
名前は早川大牙くん。少し長い黒髪と切長の目、身長は175センチくらいで、体型は細身。普通の男の子。
でも、性格はすごくカッコいい。
素直に相手に気持ちを伝えられるところとか、私の心を読んでいるかのように欲しい言葉をそのままかけてくれる気を遣える凄い人。
「はぁ、大牙くんのこと、好きになっちゃった……」
強気に攻める自分を思い出すとすごく恥ずかしい。けど、幸せな時間だった。
大牙くんは男らしいところもあって、最初の出会い、つまり昨日の放課後は私のことを助けてくれた。
背の高い太った男の子に私が襲われそうになると、大牙くんは颯爽と現れた。
私に目配せを送って逃げるように促して、自分は相手と向き合って対話していた。
手を出すこともなく、感情を昂らせることもない。
その時も相手の心を読んでいるかのように的確で分かりやすい言葉を伝えていた。
結果的に相手は私になんて目もくれずに屋上から飛び出すと、陽気な鼻唄を奏でながらいなくなった。
あれほど情緒が不安定になった相手に対して、あんな冷静に対処できるなんて……本当にこの人は何者なんだろうって思った。
そして……気になってしまった。
だから次の日の昼休みは、彼の後をつけて屋上に行って声をかけてみた。
大牙くんは私のことを見てもピンと来てなかったけど、名前を伝えたらすごく驚いていた。
私の悪い噂ばかりが一人歩きしていて、誰も本当の私のことなんて見ていない。きっと大牙くんもそうなんだろう……勝手に思っていた。
でも、大牙くんは私の笑顔を褒めてくれた。
怖くないって、素敵だって、言ってくれた。
私は救われた。
嬉しかった。
だから……恋に落ちたのかもしれない。
「……大牙くん、嫌いな食べ物とかあるのかしら?」
私の初恋はまだ始まったばかりだった。
明日はお弁当を持っていってあげる
大牙くんには上手く誤魔化したけど、私は、花野香織は、早川大牙くんのことが異性として完全に好きになっていた。
俺だけ好感度が見えて心の声が読める世界〜気がついたら【冷笑の姫】を堕としていた件について〜 チドリ正明 @cheweapon
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