研ぎ澄まされし力と技と心の強さ! 圧倒的な熱量で綴る異世界忍法活劇!

 読み始めてすぐに、圧倒的な熱量に心を奪われました。

 異世界転移を扱った作品で、縫や独去、嘉助たし、『切支丹の忍たち』が、魔法の存在する異世界へと転移することで物語が始まります。

 異世界では魔法を操る騎士たちが平気で民衆を虐げる。そんな場面に遭遇してしまった縫たちが、バッタバッタと敵を薙ぎ倒していく。そんな痛快な展開が描かれています。

 この作品の何よりもの特徴は、縫たちが持っている『忍の技』の凄まじさ。

 冒頭では、異世界転移する前に『島原の乱』での戦いのシーンが描かれますが、そこで縫が圧倒的な身体能力を駆使し、襲ってくる蜂たちを目にも止まらぬ速さで素手で潰していく場面が登場します。

 この辺りのシーンを読んだ段階で、一気に引き込まれました。絶対に面白い話だろうと確信し、その後も彼らの活躍を見守って行くことに。

 特殊なスキルではなく「鍛え抜いた技」という『達人』の境地が見せてくれる熱さ。
 そして、死と隣り合わせの激しい状況に身を置き続けるという覚悟。

 中島敦の『名人伝』や山田風太郎『伊賀忍法帳』や『魔界転生』を読んだ時の凄さとか、黒澤明の『七人の侍』を観た時の感動とか、とにかく「凄さ」、「熱さ」というのをひしひしと感じさせてくれる作品でした。

 研ぎ澄まされた技や力が描かれる作品というのは、魔法やスキルで戦うのとはまったく別の面白さがあります。「もしかしたら現実にも可能なのかも」と思わされるような不思議なリアリティとか、「人間そのものの可能性」みたいなのを感じさせてくれるところが、胸を熱くするロマンに満ちているのだと思います。

 そんな「人間の底力」や「人間讃歌」を描き切った本作、是非とも多くの人にオススメしたいです。

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