〚カクヨムコン10〛 天涯に標されし十字架 ー 切支丹忍び五人は異世界にて魔法騎士二千騎を迎え撃つ ー
木山喬鳥
第一話 時は滿てり 神の國は近づけり
夜の海の上に、
聴くのは小舟を
男だ。歳のころは五十歳あたりか。
「ここまで届くのか。まるで人の声ではなく、風の
聞こえるのは、
キリシタン
手を合わせる先がちがうだけで〝
そう
ふと思う。
キリシタンに
しかし、あったとしても
どうにも気が
男は、
聴く者もいない夜の海の上を、
「時は
返す声もなくため息をつく。
全滅とは、な。
ワシらは当主様の
わかっていたが、やりきれない。
だいたい何のために、この
ご当主は、我らにはなにも語られんので、わかりもせん。
腰回りの
「姫様。
「見
闇に浮かぶ
われらを
ワシら
「見えるとはいえ、見て楽しいものもないですな」
木やり場の材木のように
そのなかを、
船に
あからさまに
間違っても忍びの取る逃走方法ではない。
だかしかし、動けない仲間を運ぶ方法が
ワシは、夜間の海上で
まして海に満ちた徳川の
したがって、姫様の
寝ている二人は
「この
「ほんとによ。えらい騒いどったもんね」
眠っている二人は、どちらもワシと同じ
人を殺すこともある忍びが、
だが、迷いあるワシはともかく、ふたりは熱心に
しかし、忍びで
そんな者に居場所も行き場もあるはずがない。
だが
信心といえば、徳川の陣の
誰もがおのれの
いまは、信心などどうでもいい。
とにかくこの場から逃げねばならない。
これ以上
さっさとこの場を
我らは
いわば盗み働きに来たのだ。
だが侍たちがこれほどの大軍を出すとは思わなかった。
逃げる
だがワシら戦場からの逃げ時を
こいつらが骨の
原城址の戦では、もはや
逃げ時だと言うても聞きやせん。
ほとほと困っておったが、
ようやく
ワシはこの
負け戦になぞ、いつまでも
我らの
ふいに前方に光が
なるほどこれは────徳川の方の
まあ、見つかるだろうな。いままでよくもったほうだ。
「敵ですな」
「
向こうもこちらに気がついたな。騒いでおるわ。
「前方ぉ、囲みを抜けようとする舟あり!」
「
「
うるさい声が、ここまで聞こえる。
敵の侍たちは、はりきっておるな。
侍どもの、
「そげん照らさ
姫様が目を向けたとたんに船上の侍の持つ
「風か? 矢で
「
「
すでに
原城址のまわりは海まですべて徳川方が
遅かれ早かれ敵にはあたるとわかってはいた。
しかし、腹が減り切った身体で戦うのは
「
「
この間合いならば、やれるだろう。
「あぁんめい じんす ぜずきりすと まるやさま」
印を結び、その手で目を隠す。
よし
「おい、小舟が消えたぞ、どういうことだ。どこへ行った?」
「あ? こ、これは
「大塚ッ、オマエが向かいの船に
もちろん
ワシの
〝自分の見ている
聴覚も嗅覚も感覚のすべてを同じように入れ替えできる。
他人の視覚や聴覚を混乱させるのがワシの
その
ワシの行った
とはいえ、
敵の船に飛び移り、術中にはまり取り乱す敵を次々に刺して
これにて
「危なかよぉ独去坊、虫よ」
「虫? 夜の海に虫が?」
敵の船のなかより
「なるほど、あれですな」
三人か。
ワシに
「
こちらに投げた
匂いの後から
明かりに照らされ
「
点々と
「
「笑うとらんと、
「新手は総勢八人はおります。ワシでは力不足ですな」
ワシは、四人より多くの者と感覚の交換はできない。
蜂などの虫は、はじめからムリだ。
「は? 泣き言わんでぇ。もぉ、
「さて、それには
蜂が広がるとともに敵からは必勝を確信した声が
「
さもあろう。
この先に逃げられる道はない。
この場で、攻めを防ぐ手立てもない。
大量の
運良く死なずとも、もはやロクに動けなくなる。
だが、そうはならん。
「うるさ
この女がいるからだ。
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